立位歩行が可能になった慢性疼痛をもった身体表現性障害(転換性障害

大森英哉 立位歩行が可能になった慢性疼痛をもった身体表現性障害(転換性障害)患者は何をおもったか 心療内科 2008;12(5):412-415

  • 慢性疼痛は主観的な要素が大きく介在する病態であるため、生理的病因のみならずそれに伴う、心理的、行動的、社会的因子を含めた関係性に対する考慮が必要になってくる。したがって、慢性疼痛を理解するには患者との対話のツールとしていくことは不可欠な作業となる
  • 語りを聴くことは治療者自信への揺さぶり体験でもあり、そこには治療者ー患者関係のあり方も入り込み重要な作業ともいえる
  • 痛みの物語を語る患者は、単に身体的治療をうけることを希望しているだけでなく、医師や看護師が証人の役割を担うことによって、彼らの苦しみが社会的に正当なものとして認められることを望んているとも述べている
  • 一般に転換性障害をもった疼痛障害では疼痛がコミュニケーションの手段となっており、負の行動強化や疾病利得がらみられ直面化の場合で症状の増悪を繰り返す。
  • 生田は、彼ら(慢性疼痛患者)が症状にとわわれなくなるとき、彼らが得たものは、もし症状に苦悩しなければ決して得られなかったであろうような何かを自分が獲得できたと実感されるようななにかなのであると論じているが、この獲得した何かによって彼ら慢性疼痛患者は新たなドラマが動き出すわけなのであり、何かをつかんだ行動変容にこそ慢性疼痛のゴールがあるのであろう。
  • 今回の症例での語りのなかで、「痛みがあっても歩くことの大切さ」が何度も強調されていた。彼が獲得した何かとはここに行き着くと思われる