福井弥己郎 痛みのメカニズムとその治療 メンタルケア 1997;2:46-56
- ゲートコントロールセオリー gate control theory
- 痛みが伝わるとき脊髄後角に門(ゲート)があって痛みを調節している
- ゲートの開け閉めには、自律神経、(社会的、家庭的)環境、性格、ストレス、生活の仕方や、人とのかかわりかた、気分、その他が関係する
- ゲートが開く
- 自律神経のバランスが崩れたり、くよくよするとき、マイナスの気分のとき、ストレスが加わると門は大きく開いて痛みがたくさん頭に伝わる
- 精神、意識的には不安、抑うつ、怒りの抑圧
- 触覚などの末梢刺激、過労、筋の緊張
- ゲートが閉じる
- 自律神経のバランスがよいとき、楽しい時、プラスの気分のとき、門は閉じるので、おたじ傷があっても痛みの情報が頭に伝わらないので、あまり痛く感じない
- 幸福感、心のリラックス、安定した心の状態、気分の良い場合
- 筋のリラックス、刺激療法、温熱、寒冷、トレーニング
- 例えば無意識に痛いところを抑えたりさすったりする。これは太い神経を刺激することによってゲートを閉じて痛みを和らげていると考えられる
- 下行性抑制系
- うつでは下行性抑制系がよわっている。抗うつ薬は下行性抑制系を活性化
- 中枢性パターン生成理論
- 疼痛行動
- Fordyceは周囲の人に痛みの存在を告げるあらゆる患者さんの行動を痛み行動だと提唱しました
- 症例 本人の痛みが一人暮らしになったことへの不安、寂しさの表現であることを説明し、精神的な支えの必要性を強調した。このような家族療法をおこなったところ痛みの訴え、疼痛行動は激減した。
- 患者さんの苦痛を持続増強せざろうえないような心理社会的背景への理解を示す上で、母親的に受容し、疼痛行動を増悪しないように父親的な対応で適応行動を強化する治療をします。
- 痛みの多層構造 Loeser
- pain(痛み感覚),suffering(苦悩),pain behavior(痛み行動)
- 痛みの捉え方を変える(認知の修正)ー認知行動療法
- カウンセリングをしていると、自分を正しく主張できないため慢性の痛みでストレスを代弁している患者さんもすくなくありません。また生育歴で小さい時からの愛情が不足していた患者さんも多く、自分の甘えを表現できないため対人関係で緊張が強く、小さい時からの抑圧的な生活スタイルが痛みの原因と鳴っている人も多く見受けられる
- 思考の内容や感情が人間の痛みに影響するし、また行動の推進力ともなるので、痛みに対する認識(認知)がかわらない限りゲートを閉める適応的な行動の増加は望めません。
- 「痛みはあるけがやりたいことはできるし、生活は十分に楽しめる」というのを目標に、よりよい精神状態で暮らせるように認知や態度の修正をするのが認知行動療法の治療です。
- ペインクリニックにおける痛みの心理面からの治療
- 第一段階 心理的アプローチの前に
- 第二段階 痛みのカウンセリング 良好な関係の確立、医療面接
- 感情とくに怒りをうまく表現できないことが重なりあって、慢性疼痛になっているひとも多いです。表面には見えない、自分の悩みを他人に打ち明けることによって、自分のつらさが分かってもらえたという気持ちを持つだけでも苦しみがやわらぎます。
- 家庭内葛藤のために痛みが持続している場合には個人に対する支持的な心理療法だけでは難しい場合が多く、「まわりの人の協力も必要ですから一度みなさんにきてもらって痛みの説明をしようと思います」などといって家族療法を始めます。問題を持続させる交流パターンが変化すれば問題は消失しますが、家族の誰も責任者をつくらないような配慮が必要で、難しいケースは心療内科の専門家に依頼します。
- 第三段階
- 転換期の慢性疼痛の治療:チーム医療の必要性
- 日本の医学はともすると技術が先行し、患者の傷ついた心、孤独な魂へのいたわりがややかけているといわれています。
- アメリカには2000ものペインセンターがあり、慢性疼痛の患者を集学的治療でチーム医療しています。
- 日本にはひとつもペインセンターがありません。