難治性疼痛患者の問題点

増田影則、八反丸健二、八反丸真人、鄭忠和 難治性疼痛患者の問題点 心療内科 2002;6:437-441

  • 今回経験した難治性の慢性疼痛症例の発症前の特徴
    • 職場や家庭では過剰適応的で、それぞれの分野で活躍し、実績を上げ、周囲からの評価も高かった
    • 男性 几帳面で徹底性が高い。粘着気質をもつか自己抑制的 女性 ヒステリー反応
    • 自分だけで解決できない大きなストレスを抱えていた 職場や家庭でショック体験をもち人間不信感があった
    • 家族歴 幼小児期に心的外傷体験があったら、親を早くに亡くしていたりしていた。また、結婚後の離婚や借金、夫婦間に不仲など家族観の強い葛藤と根深い問題を抱えていた
  • 入退院を繰り返すようになってからの問題
    • 家族や親族は、患者の訴えに振り回され、社会的、経済的に負担を抱え困り果てていた。しかし、患者は家族が苦痛をうけていることに気づくことはできなかった
    • 患者の痛み行動を強化する医療従事者と家族がいた
    • 労災や保険の問題があり、事故の場合は未解決な補償問題を抱えていた
  • Engel
    • 痛みをおこしやすい患者pain prone-patientは、器質的所見を上回る痛みを訴え、そちて発散できない攻撃性と怒りをもち、自分にとって重要な相手や地位、立場を失うか、失いかけた時に痛みが出現すると報告している
  • Burns
    • 怒りなど受け入れがたい感情を抑圧したとき、その転換として疼痛に発展すると考えた
  • Maruta
    • 治療を困難にする要素
    • MMPIのHsおよびHyスケールが高い。痛みに関連した手術回数が多い、痛みの訴え器官が長い、休職期間が長い、主観的痛みのレベルが高いなどを挙げた
    • さらに幼少期の愛情不足や虐待、親の喪失による心的外傷は、慢性疼痛患者の痛みに弱い傾向を作るといわれ、また、結婚生活や家族の葛藤を避ける手段として慢性疼痛になる例もあるとの報告もある
  • 患者の認知と行動変容にて解決できない大きなストレスを抱え、向け先のない激しい怒りをもつ難治世症例の治療で大事なことは、まず幼少期の生育歴や家族観の葛藤、結婚生活、家庭や職場、学校でのストレスなど心理社会的背景について十分な検討が必要である
  • そして、ストレス場面での葛藤を避ける手段として痛みを長引かせたり、種々の痛み行動をとっている患者の心の痛みを理解しつつ、治療者側の粘り強い、行きの長い取り組みしかないと思われる。