膝痛 知る診る治す 3

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  • 第4章 膝痛を治す ストレッチ以外の保存療法
    • p132 ヒアルロン酸製剤の関節内投与は膝OAの治療法として、日本では20年以上の実績を認める確立した治療法である。ヒアルロン酸は、関節液の主成分であるグルコサミノグリカンであり、作用機序として関節滑動面の潤滑化、抗炎症作用、痛覚神経の閾値改善作用などが報告されている
    • しかし関節軟骨が消失した膝OAではのヒアルロン酸関節内投与の効果は、機序も含めて十分に解明されておらず、関節内投与によって関節痛として重要な関節周囲痛や関節支持組織痛が改善するかどうかは疑問である。にもかかわらずヒアルロン酸の関節内投与によって関節周囲の痛みと考えられる膝蓋下脂肪体由来の疼痛が2−3日間消失することを著者は確認している
    • 膝OAには関節炎を伴うものと伴わない例があり、ヒアルロン酸製剤投与の効果は関節炎合併例で大きい。
  • 第5章 膝痛を治す 手術療法
    • p150 関節鏡下手術では、手術を受けたことの期待感がなせる、全身的な鎮痛効果もあると思われる。術後や術後後療法にともなう安静や保存的治療効果も無視できない
    • p166 人工膝関節置換術は世界的に数多く行われている荒廃した膝関節機能再建の最終手段である。荷重歩行時の痛みが確かによく取れ、患者の満足度も高い。しかしながらTKAでは関節滑膜を含めて、線維性関節包、周囲支持組織をすべて温存する。したがって痛みの原因組織はほとんど温存されているわけである。TKAの術後に種々の膝痛を患者が訴えることは稀ではない。そのような問題を解決し、より高い機能を実現するためにいろいろな工夫をしている。
  • p167 半月板切除は世界で最も多い膝手術である。しかし痛がる患者の多くは膝前部痛であることを前提に、膝痛の部位診断を慎重に行わねばならない。現実的には世の中で多くの罪のない半月板が切除されていると思われる。半月板切除の外科的効果は半月板断裂片による機械的障害による痛みの改善に限られることをよく知るべきである。また取る手術の効果は、一時的であることを認識すべきである。
  • p169 私たち医師の目から見て客観的に軽症なのにもかかわらず、訴えが強い患者も少なくない。患者自らが「手術をしてください」と積極的に申し出るような場合にはくれぐれもご注意を
  • 患者が痛みを感じることは確かであるが、どこが一番痛いのか、悪いのはどこか?まったくわかっていない。だからこそ痛みを発している部位を特定するのは治療する私たちの役割である。そこの部分を患者任せにしていると、部位特異的な疼痛治療はできない。治療効果は半減する。おざなりな治療になる