老年期の心気・不安

妹尾春夫、堀口淳 老年期の心気・不安 老年精神医学雑誌 2009;20(11):1233-1241

  • 心気症
    • 「身体症状に対する患者の誤った解釈に基づき、自分が重篤な病気にかかっているという概念へのとらわれ」、「そのとらわれは、適切な医学的な評価または保証にもかかわらず持続する」
    • 分類 疾病固執型、多訴型、自律神経症型、疼痛型 高齢者は疼痛型と疾病固執型が多い
    • 心理的背景には、感情変化を隠すための、あるいは歪められた感情漏出を防ぐための防衛機制が発症因子のひとつとして考えられている
    • 心理力動的にみると、心気症状はその患者の病人としての役割への逃避であり、個人的、社会的な期待に応えられなかったことに対する心理的逃避、あるいは社会的孤立や自身の精神的葛藤、親しい人への敵対感情などに対する心理的逃避であるとされている
    • 心気症の大きな特徴は、訴えられる個々の症状よりも、その訴え方あるいは患者の医療への関わり方にある。本症の訴えは、しばしば、その患者治療者関係の成立を遅らせ、時にはそれを拒むことさえある。そのため、本症患者は同じ症状を訴えながら、次々に病院、診療所を変え、渡り歩く、いわゆるDr shoppingになりやすい。多くの場合、その状態自体が患者の苦痛をかえって助長していることが多いようである
    • 一般に、本症患者の訴えは執拗で頑固である。そのため、患者は医療に根強い不振を持っているかのように見える。その一方で、医療に対する依存性はきわめて強い状態にあり、「医療者が患者との関係から逃れようとしている」と患者が判断すれば、患者は医療者に攻撃的になることさえある。本症患者は医療への過度の不信と依存が同居している状態と考えられる
  • 老年期不安障害

深津亮 高齢者の心気的訴え 老年精神医学雑誌 2009;20(2):141-148

  • 健康者にみられる心気的傾向 健康な心気症
    • 絶えず健康に気遣ってくらすvigilant型
    • 体調は申し分がないにもかかわらず、なにかの病気を見聞すると自らもその病気におかされているとおもいはじめるconvinced型
    • ダイエットや運動などに励んで病気の予防に腐心するpreventive型
    • 日頃は鉄のような健康を誇っているが、内心では自信がなく、ささいな病気に罹るとたちまち心気的となるnegative型
    • 知人がやつれたようにみえると、まるで自分のことのようにシンパイシハジメルdisplacement型
  • 高齢者の人格変化
    • 不安を起こしやすいタイプ
    • 不安定で融通がきかなくなるタイプ
    • 妄想的で攻撃性が目立つタイプ
    • 自信を失うタイプ