生活習慣病と腰痛 1

平林冽、田口敏彦 生活習慣病と腰痛 −早期予防・早期対策にむけて 序文 日整会誌 2010(84);435-436

  • 家庭や職場の雰囲気や人間関係が悪ければ腰痛が多発・難治化することは広く周知されてきたところである
  • 腰痛が自覚的愁訴である以上、その発症と経過にはしばしば身体的要因よりも心理的要因が大きく影響する

吉村典子、村木重之、岡敬之、川口浩、中村耕三、阿久根徹 腰痛の疫学 −大規模ROADから 日整会誌 2010(84);437-439

  • H19国民生活基礎調査結果 腰痛の有訴者率
    • 男性一位 87.4(人口千対)
    • 女性ニ位 117.9 一位は肩こり
  • ROAD study
    • 腰痛に有意に関連する要因は 女性、BMI、およびLSあり; lumbar spondylosis
  • 2000年のsystemic review 肥満と腰痛は弱い相関がある可能性があるが、まだデータが足りない

中村英一郎、武田俊、樋口律子、成澤研一郎、清水建嗣、色川正貴、中村利孝 肥満、生活習慣と腰痛 日整会誌 2010(84);440-445

  • 企業の定期健康診断データを用いた横断調査 n;46950
  • 腰痛の有訴率は女性に多く、立位作業者やかなり動く作業者に多く、肥満、運動不足、喫煙、睡眠不足のものに多いことがわかった
  • 肥満かつ運動不足のものは、肥満がなくかつ運動習慣があるものに対して腰痛有訴率が相加的に高くなり、そのオッズ比は1.7まで上昇した
  • 座位作業者の場合、年齢、性、BMI,運動習慣、喫煙、睡眠時間、残業時間が腰痛に関連する因子となった
  • 一方、かなり動く作業者の場合、BMIや運動習慣、残業時間は腰痛に関連する因子ではなくなり、年齢と性の他、喫煙、睡眠時間のみが有意な項目であった
  • 肥満、生活習慣への介入 腹囲の減少と腰痛の改善に弱いながらも有意な相関がみられた
  • 腹部CT画像
    • 大腰筋面積では面積小群の腰痛有訴率が面積大群にくらべ有意に高かった
    • 一方、傍脊柱筋面積は2群間で腰痛有訴率に有意差なし、同様に内臓脂肪面積、皮下脂肪面積でも、2群間で腰痛有訴率に2群間に有意差なし
    • 年齢、性別、身長、体重、大腰筋面積、傍脊柱筋面積、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積を独立変数とし、腰痛の有無を従属変数としてロジスティック回帰分析をおこなったところ、角面積では大腰筋面積のみが有意な項目であり、オッズ比は約1.4となった
    • 内臓脂肪面積がおおきくかつ大腰筋面積の小さい群の腰痛有訴率は、内臓脂肪面積が小さく大腰筋面積が大きい群と比べて有意に高かった
  • 内臓脂肪が多く大腰筋面積の小さい者に腰痛有訴率が高いという結果を得た。この結果は横断調査でみられた肥満でかつ運動不足の者の腰痛有訴率が高いという意味を説明していると思われる。また、体重減量と腹筋殿筋運動の介入は、内臓脂肪の減少と筋への刺激、強化、筋面積増大に関与した可能性が考えられる

紺野慎一、菊池臣一 心理社会的要因、QOLと腰痛 日整会誌 2010(84);446-451

  • 腰痛の治療を行うにあたっては、ゴール設定を患者のQOL向上に置く。すなわち、痛みの除去を目的とするのではなく、痛みの意味を尋ね、どのような障害があるのかという視点に立った治療の組み立てが重要である。痛みの除去は、治療の目的ではなく手段の一つにすぎない。
  • 痛み刺激が加わると腹側被蓋野から大量にphasic dopamineの放出により、側坐核腹側淡蒼球でμ―オピオイドが産生され、痛みが抑制される
  • phasic dopamineは痛み刺激のみではなく、快感や報酬の期待によってもおこる。好きなにおいやイメージ、好きな音楽m、好きな食べ物は痛みを抑制
  • 抑うつ、不安、ストレス等が存在するとphasic dopamineは痛みに刺激に十分反応せず、その結果μオピオイドがきちんと産生されず、痛みの抑制機構が働かない
  • ストレス、不安、うつ等があると、腹側被蓋野からtonic dopamineが放出される。Tonic dopamineが増加すると、痛み刺激に対するphasic dopamineの反応性は低下し、十分なμ―オピオイドが産生されなくなり、痛みは増幅されていく
  • 痛み刺激を強くしていくと健常者ではphasic dopamineの放出が痛みの強さに比例して増加す。しかし線維筋痛症の患者ではこの比例関係が全く認められない。(ドーパミンシステムの破綻)