中井吉英 慢性疼痛患者の身体・社会・行動 日本運動器疼痛研究会誌 2010;2:20-23

  • 治療の目標を疼痛の改善よりも、痛みがあっても変化した事象(QOLや疼痛行動、認知)に焦点をあてることが肝要である
  • 急性疼痛に対する診断や治療法では、慢性疼痛に治療は難しい。原因ー結果といったh直線的思考からシステム論的考え方に基づく円環的思考へのシフトが必要である
  • 痛みのそのものに焦点を当てず、痛みを持ち悩み苦しむ個々の患者に焦点を当てることで、その病態と治療法が明らかになる。痛みの消失のみに焦点をあてた治療は成功しない。患者には「痛みはまだつづいていると思いますが、どういうことが出来るようになりましたか」といった対応を治療の中心に据えることで、人生や生活に中心に存在する痛みを端においてやることができる。したがって、慢性疼痛の治療目標を生活の質、行動範囲、認知の変化に置くわけである。
  • 心因性なおの言葉は患者の人格を否定することになる
  • 慢性疼痛の治療の中心はセルフケアと疼痛行動の変容である。
  • 痛みをとることに焦点をあてず、痛みがあっても、これまでできなかった日常生活や行動がスムーズにおこなえるようになることが治療目標である
  • インスコアを用いた自己観察と自己評価によって、痛みを強化している誤った行動や認知を変容させる。
  • 長期におよぶ痛みのため、患者と家族とのこじれた関係が疼痛行動の難治化に関わっている場合には、システムズアプローチを治療に加える。