小林大輔、笠井慎也、池田和隆 鎮痛薬感受性個人差の遺伝的因子 Anesthesia 21 Century 2008;10(3):1926-1934
- 鎮痛薬感受性個人差には、環境因子だけでなく遺伝的因子があると考えられている
- 患者それぞれでのオピオイド鎮痛薬の感受性に大きな差異があり、同じ用量でも、ある症例では鎮痛効果が十分に得られるのに、他の症例では鎮痛効果が不十分であったり、また他の症例では強い副作用に悩まされたりすることもある。患者それぞれの体質にあわせて適正量のオピオイド鎮痛薬で治療するテイラーメイド疼痛治療が実現すれば、医師が投与量を低く抑えなくなり、より効果的な緩和ケアができると考えられる
- オピオイド受容体 μ、δおよびκオピオイド受容体の3つのサブタイプあり モルヒネはμオピオイド受容体(MOP)に高い親和性を持つ
- モルヒネ以外のオピオイド鎮痛薬においてもその鎮痛作用にはMOPが主要な役割を果たしていること、および、ヒトにおいてもMOPの発現量がモルヒネや麻薬拮抗性鎮痛薬に対する感受性の個人差に影響を与えている可能性を示している
- 内因性オピオイドペプチド エンケファリン類、エンドルフィン類、ダイノルフィン類、エンドモルフィンなど20種類以上の内因性オピオイドペプチドが見出されている
- これらの内因性オピオイドペプチドの遺伝子多型が発現量の個人差を引き起こし、オピオイド鎮痛薬の感受性に影響を与えている可能性も考えられる
- Gタンパク質活性型内向き整流性K+(GIRK)
- オピオイドの代謝
- 関連遺伝子の多型解析
- いかに優れた鎮痛薬であっても、「心の痛み」までは消し去ることはできないことをわれわれは改めて理解する必要がある。本当の意味での全人的ケア、緩和ケアを理解し、患者の訴えるすべての痛みに堪えるべきであることをわすれてはならない。