痛みとスピリチュアルケア

村田久行 痛みとスピリチュアルケア ペインクリニック 2010;31(3):327-335

  • スピリチュアルペインとは、終末期がん患者の場合、死に直面する患者が体験する生きることの無意味、無価値、空虚などの苦痛のことであり、「自己の存在と意味の消失から生じる苦痛」と定義される
  • 難治性の痛みは患者の意識を痛みに向けさせ、それは怒りや悲しみの感情を激発する。その痛みと感情の訴えを誰にも聴いてもらえない時、患者は孤独を深め、将来を失い、自己の無力を感じ、ますます意識は痛みに向けられる。すると感情はさらに刺激され、ついには「もう生きる意味がない」というスピリチュアルペインにまで発展し、それがまた痛みを増悪させる悪循環に陥るのである
  • つまり、痛みとは単に身体・神経組織ノメカニズムだけでは解明できない<身体・関係・実存>が連鎖する一種の「体験」なのである
  • 痛みに苦しむ患者から、「私のこの痛みは耐えられない!」と訴えられたとき、医師はこの患者の訴えに<身体・関係・実存>の3つの側面から応対するように求められているのである
  • 森田らは、終末期がん患者のスピリチュアルペインとして、「人生の意味・目的の消失、衰弱による活動能力の低下や依存の増大、自己や人生に対するコントロール感の喪失や不確実性の増大、家族や周囲への負担、運命に対する不合理や不公平感、自己や人生に対する満足感や平安の喪失、過去のできごとに対する後悔・恥・罪の意識、孤独、希望のなさ、あるいは、死についての不安といった広範な苦悩」を挙げている。
  • もし患者自信が援助者との対話から、「死をも超えた将来を見出す」ことができたならば、その将来を目標として生きる新たな現在の意味を回復するに違いない
  • スピリチュアルケアの方法としては、<傾聴と共感>そして<ともにいること>が重要であるといわれる
  • 傾聴の具体的な訓練方法
    • サインをメッセージとして受け取る
    • メッセージを言語化する
    • 言語化したメッセージを返す(反復する)
    • そこで成立した,満足、安心,信頼の関係を基礎にして、相手の想いを明確化するという<援助的コミュニケーションの原理>を習得する