脳のなかの身体―認知運動療法の挑戦 (講談社現代新書 1929)

脳のなかの身体―認知運動療法の挑戦 (講談社現代新書 1929)

  • イタリア サントルソ認知神経リハビリテーションセンター カルロ ペルフェッティ
  • 治療の標的は目に見える身体の運動麻痺でなく、目に見えない「脳の中の身体」なのである
  • 身体を動かすだけでは不十分です。感じるために動くことが必要です。運動というのは、自分自身あるいは外部世界を認知するためのものです。大きな力を要する運動、すばやく大きな移動を要するような運動の練習はあまり役に立ちません。
  • 脳は、あなたが世界を認知しようとして運動したときにもっとも活性化します。ですから、あなたは動きを「感じる」練習をしてください。感じるために注意が必要となればなるほど,脳の関わり方が大きくなります。自分の運動や対象物との接触に、いつも最大限の注意を払って下さい。目を閉じて身体を動かしてみるのもひとつの方法です。
  • 一般的に運動器とされている関節、靭帯、筋も実は感覚器である。深部感覚は自己の運動が刺激となって生じる感覚で、関節の運動覚と筋感覚とがある。
  • 神経生理学者シェリントンは、筋肉のなかに存在する筋紡錘の機能を研究し、それを自己固有受容器(プロプリオセプター)と名付けた。自己固有受容器は運動感覚とも呼ばれ、関節の動きや筋収縮によって生じる伸長や張力が複合した感覚である
  • 脳損傷によって高次脳機能障害を来すと、身体の「所有感覚(頭頂葉連合野)」と「主体感覚(前頭葉連合野)」に異常を生じる場合がある
  • 自己の身体を、脳がどのように環境との関係性において認知しているかによって、世界の表像がかわってくる
  • 脳は認知器官であり、身体と環境との相互作用に意味を与え、予測した運動イメージと近くしえたものとを比較照合し、その修正の必要度に応じて認知過程を改変していく。脳波主観的な心的イメージの改変によって学習し、自己の行為を生きる可能性を維持するのである
  • 運動イメージが想起出来ないと言うことは、動けないと言うことである。運動麻痺の回復のためには「脳の中の身体」を動かす必要がある
  • 行為する能力は筋肉トレーニングでは生まれない。単に筋力を強めても野球やサッカーは上手くならないように、ただしい技能を習得した上で筋力を鍛えるのでなければ意味がない。
  • 情報受容表面としての身体、自己変容能力を特徴とする身体、物体に複数の意味を与える身体
  • 認知運動療法の最大の特徴は、従来の運動療法のように単に身体を動かしたり、動作を反復練習するのではなく、患者に思考を要求する点にある
  • 認知運動療法ではあらゆる運動機能回復は運動学習であると捉える
  • 認知運動療法では、運動機能回復の鍵は、患者が身体の意識経験を取り戻すことにあると考える