住谷昌彦、宮内哲、四津有人、山田芳嗣 腫瘍幻肢病のメカニズムと治療 日整会誌 2010;84:34-37

  • 幻肢を随意に運動することができる患者は幻肢に病的疼痛(幻肢痛)を伴っておらず、一方、幻肢を随意に運動できなかった患者は幻肢痛を伴っていたことが報告されている。この研究グループは、幻肢の随意運動を伴わない幻肢痛患者が幻肢痛の随意運動を獲得すると同時に幻肢痛が消失したことも別稿で報告している
  • ”脳にとって健常でない肢”を人為的に作り出した状況では病的疼痛などの異常感覚が出現することが知られている
  • このことから我々は「幻肢が”脳によって健常な肢”として存在すれば、生体の警告信号としての病的疼痛(幻肢痛)が起きないのではないか」と作業仮説を立案した
  • この作業仮説から「幻肢の随意運動を獲得させることによって、幻肢を”脳にとって健常な肢”へと学習させる」ことの治療展開の可能性を提案した。
  • 身体部位の運動感覚の出現にも視覚入力は重要な役割を示し、サルが餌をつかんで食べる動作をするときに活動する神経核群は別のサルが食物をつかんで食べる動作を観察するだけで神経発火が認められる。このような神経核群はmirror neuron systemと呼ばれ、視覚的に動作を観察することによって自己身体にもその動作を模倣するような運動ブログラムを準備し、その動作の認知を行っていると考えられている。