大脳皮質における痛み応答:動物

岩田幸一 大脳皮質における痛み応答:動物 BRAIN MEDICAL 2009;21(3):219-225

  • 痛みは、いわゆる体性感覚としての性質と、非常に曖昧で表現しがたい情動系に関係する性質をもった複雑な感覚である。前者はsensory-discriminative aspect of pain(痛みの弁別的様相), 後者はmotivational-affective aspect of pain(痛みの情動的様相)と呼ばれ、痛み受容において重要な働きを有する性質である。また、これらの性質とは別に、われわれは過去に経験した痛みと比較することによって、現在受容している痛みを評価することができる。痛みを発症するような刺激を予期させる物体を見る、あるいは想像するだけでも痛みを生じることがある。このような痛みの性質は高次脳の働きが重要で、認知機能が強く関与する痛みの性質であるとされている。
  • このように、痛みはさまざまな性質が総合されて受容される非常に複雑な感覚である。
  • 痛みの情報処理に関与する神経システムは大きく分けて、外側系と内側系に分類されている。
  • これらの2つの系に、非侵害刺激および侵害刺激の両方の刺激に応答する広作動域(wide dynamic neuron;WDR)ニューロンと侵害刺激のみに応答する特異的侵害受容(nociceptive specific;NS)ニューロンがある。
  • SIは細胞構築学的に3a野,3b野,1野および2野に分類されている
  • SIは表層から深層にむかって細胞配列の異なる6層構造をなしている。SIの各層に分布するニューロンには、おおきく分けて錐体細胞(III,V,VI層)と非錐体細胞(II,IV層とがある。
  • SIニューロンは痛みの弁別において重要な働きを有する可能性が示された
  • ACC(前帯状回)はS1と違い、IV層が存在せず、5層構造をなしている
  • ACCの侵害受容ニューロンは、刺激強度弁別に対して全く関与しない可能性が示された
  • 7b野 鋭い刃物や、動物が嫌悪を感じるような物体が近づいてくると活動する侵害受容ニューロンが多数存在
  • 島皮質に存在するニューロンはACCと強い連絡を有しており、ACCニューロンと類似した応答性を示す。
  • 眼窩皮質のニューロンは刺激閾値が非常に高く、多くがNSタイプに分類され、また多くの侵害受容ニューロンが内臓からの侵害入力をうけることが明らかにされている。