痛み治療の人間学 (朝日選書)

痛み治療の人間学 (朝日選書)

  • 痛みとはあくまでも個人の体験や感覚であるため、きわめて主観的である。それゆえ、客観的に他者の痛みを評価したり、理解することは困難である。ここに、痛み学の難しさがあると同時に、人間味がある
  • 痛みはその人固有の生きざまの反映である
  • 「人は生きてきたように痛む」ということであり、「痛みは生きざまを映す」ということである
  • 「あなたが人生に絶望しても、人生はあなたに絶望しない」 ビクトール フランクル
  • なんといっても究極の痛みの治療はセルフコントロールである。
  • カウンセリングには8対2の法則というのがある。コップに水がいっぱい入っている。そのコップに新しく水をいれるにはどうしたらよいか。いったん空にしなくては新しい水は入らない。同様に治療者が何かを患者さんの心の中に植え付けるには、患者さんにいいたいことを十分言わせるために、治療者はほんのわずか言えばよい。その割合は8対2が丁度良い
  • 痛みの持つ意味
    • 急性痛 警告信号
    • 慢性痛 「助けてhelp me」「私のことを聴いてlisten to me」「私と一緒にいてbe with me」の叫び、苦痛
  • 慢性の痛みは、その患者さん固有の生きざまの歪みがからだに反映された病態と言えよう
  • 慢性の痛みの治療に難渋する理由
    • 痛みの客観的評価は難しい。痛みは主観的事象である
    • 痛みは末梢で感じ、脊髄を介して脳に至り、脳の中で認知する
    • 脳の中には、学習された多くの記憶が蓄積されており、それと痛みが複雑に関連し、様々な悪循環が形成され、その結果患者さんの固有の痛みが形成される
    • したがって、痛みは人間の情動もふくめたこころの動きから影響されやすい
    • 痛みは神経が伝えるが、神経は全身の血流とも関与する
    • 血液の中になるさまざまな発痛物質が蓄積すると痛みがおこる
    • これらの発痛物質と生体の酸化バランス防御系は強い関係にある
    • 生きざまの歪みはQOLの歪みであり、生命力を低下させる