理学療法 痛みの病態生理学5 6

富永真琴 最近の知見から:痛覚に関与する感覚受容器の働きの分子機構 理学療法 2008;25(4):700-704

  • 感覚神経終末で侵害刺激を受容する最も簡単で有効的なメカニズムは、陽イオン流入がもたらす脱分極によって電位作動性ナトリウムチャンネルを活性化させて、活動電位を発生させることである
  • カプサイシン受容体 TRPV1
    • 唐辛子の主成分であるカプサイシンは辛みとともに痛みを惹起する
    • TRPV1の遺伝子や蛋白質は当初、感覚神経特異的に(一次痛を担う無髄のC線維に多く)発現していることが観察されたが、その後脳や上皮細胞にもその発現が報告されている 脊髄後角にも発現
    • TRPV1はカルシウム透過性の高い非透過性陽イオンチャンネルであり、カプサイシンと同様に、生体に痛みを惹起する熱や酸によっても活性化する
    • TRPV1が複数の侵害刺激によって活性化するという性質は、カプサイシン感受性の侵害受容神経が複数の刺激に応答するpolymodal nociceptorことと一致する
    • 麻酔薬propofolやlidocaineもTRPV1を活性化する
    • 慢性炎症性疼痛や神経因性疼痛の動物モデルでTRPV1阻害剤が機械刺激痛覚過敏や機械刺激異痛症(アロデニア)を抑制することが相次いで報告され、TRPV1阻害剤の慢性疼痛への応用が期待されるようになった。
    • TRPV1阻害剤は一過性の体温上昇を起こす
    • カプサイシンは痛みを惹起する一方で鎮痛作用も有し、鎮痛薬として使われる。カプサイシンに暴露された感覚神経終末が他の刺激に対して反応しなくなること(脱感作)によると理解されている
  • TRPV2 52度以上の熱刺激で活性化
  • メントール受容体 TRPM8 冷刺激も痛みを惹起し、侵害性冷刺激、熱刺激、機械刺激に応答するpolymodal nociceptorが存在する
  • TRPA1 ワサビの受容体 17度以下の侵害性冷刺激によって活性化される

最近の知見から:痛覚ニューロン活動 理学療法 2008;25(5):831-839

  • 末梢の痛み刺激は一次求心線維のAδ線維のやC線維によって脊髄後角の痛覚ニューロンに伝達され、視床を経て大脳皮質の一次性体性感覚野に到達し、最終的に痛みとして認知される。脊髄痛覚ニューロンは痛み情報を中継するだけでなく、その活動は脊髄内抑制系や脳幹からの下行性抑制系、あるいは脊髄内に遊離されるさまざまな神経伝達(修飾)物質によって多彩に制御されている。したがって、脊髄痛覚ニューロンの活動様式をしることは痛みを理解するのに欠かせない
  • 最近の研究において、脊髄痛覚ニューロン活動の可塑的変化がその発生に関与していることが示唆されている
  • ニューロン間の接合部位をシナプスという
  • 実際に、とうつうにはチクチクすとする鋭い痛み(一次痛)とじーんとする鈍い痛み(二次痛)が存在する。一次痛はグルタミン酸を介する速いシナブス伝達に起因し、二次痛はサブスタンスPなど神経ペプチドを介する緩徐なシナプス伝達に由来する
  • 深部組織由来の疼痛は、その発現が緩徐で局在は不明瞭である
  • 脊髄痛覚ニューロンに伝わった皮膚または深部組織における痛み刺激による興奮は、交感神経性前ニューロンだけでなく、脊髄前角の運動ニューロンに伝わって筋攣縮が生じる。この筋肉の興奮は脊髄痛覚ニューロンに再び伝わり、筋攣縮を維持することになる。このように痛みが持続する場合には、神経ブロック療法やトリガーポイントブロック注射などによっていたみの悪循環を断つ必要がある。
  • 脊髄痛覚ニューロン活動の増強
  • 脊髄痛覚ニューロン活動の抑制
    • 下行性抑制系
    • 脊髄内抑制系