本田哲三 慢性腰痛に対する認知行動療法 日本腰痛会誌 2005;11(1):20-26

  • Melzak & Wall gate control theory
    • 疼痛体験は単に末梢から中枢への一方方向の感覚でなく、中枢からの関与(感情や認知の要素)や脊髄後角での神経線維間の活動量の競合の結果であるてんを強調
  • Fordyce
    • 行動療法の立場から慢性疼痛患者の疼痛行動に注目
  • Loeser
    • 疼痛体験がnociception(侵害受容), pain (疼痛感覚), suffering(苦悩), pain behavior (疼痛行動)の4相からなるとしたmultifaceted modelを提唱した
    • 侵害受容は末梢でのAδ or C線維を刺激する組織破壊的なエネルギーを意味する
    • 疼痛感覚は神経系におけるnociceptionの知覚
    • 苦悩は中枢での陰性の情緒的反応 注意不安抑うつなどの心理的要因により影響される
    • 疼痛行動 苦悩の表現であると同時に強化子によって増強
  • IASP 1986 疼痛の定義
    • 実際のおよび潜在的な組織障害に関係、あるいはそのような損傷に関連して述べられるような不快な知覚および情緒的な体験
  • 筆者の認知行動療法
  • 目標 身体活動性を増加させるとともに、それを通じて、痛いからなにもできないという患者の否定的な認知(思い込み)を、痛いけれどやるべきことはやれるし、生活を楽しめるといった建設的な態度に替える
  • プログラム施行上の問題点
    • 安易に心因性疼痛と決めつけない 疼痛は本来身体ー心理ー社会的な障害である 不合理な痛みのうったえであっても、患者にとってすべての痛みは真であると受け止め、そのうえで痛みの教育を行うとともに患者の立場にたってコントロール方法を真摯にさぐっていく態度が養成される
    • 痛みに障害的に対応する
      • 医療従事者がすべての痛みを取り除けるわけではない
      • 痛みが必ずしも身体の重篤な障害を意味しない
      • 適切な身体活動はかえって痛みを減少させる
      • 痛みがあってもそれなりに生活を充実させていくことが長期的には痛み軽減につながる
    • チーム全体でサポートしていく
  • 筆者の持論では慢性疼痛の本体は「過剰な医療依存」であり、医療者チームの適切なサポートによって患者は徐々に「痛みを人生の一部として受入れる、痛みを陰性の伴侶とする、痛みにもかかわらず充実した人生を楽しむ」といった「自立した」生活態度へ変化していくのである。