伊藤雅文 痛みについて 痛み系の先住者である免疫炎症系のしくみ 痛みの病態生理第3回 理学療法 2008;25(2):449-454

吉本隆彦、熊澤孝朗 生理的な痛覚系 痛みの病態生理第4回 理学療法 2008;25(3):580-587

  • 痛みは触覚が強くなったものでなく、一つの感覚
  • 特徴
    • 特定の種類の刺激に対して感度が良いということはない
    • 痛覚には順応がおこらない 順応しないどころかpositive feedbackがおこることあり
    • 痛み刺激がくわわると、その刺激から遠ざかる逃避反射、筋緊張の亢進、血圧や心拍の上昇といった自律神経系を介した反応、または不快感、不安感のような情動系の変化等、さまざま身体反応が誘発される
    • 体内には鎮痛抑制系がある
  • 2つのいたみ
    • 一次痛 高閾値機械受容器 強度の機械的刺激のみに反応 有髄Aδ線維
    • 二次痛 ポリモーダル受容器 機械的、化学的および熱刺激に反応 刺激様式は広く、幅広い刺激強度に応じ、皮膚だけでなく骨格筋、関節、内蔵など広く全身に分布 C線維 炎症などにより反応性が著しく修飾される
  • 脊髄後角
  • 後角にある4つのニューロン
  • 2つの痛み伝達系
    • 一次痛の伝導路 新脊髄視床
    • 二次痛の伝導路 旧脊髄視床路 上行する際脳幹網様体に側枝を伸ばす 脳幹網様体は、覚醒系、運動感覚の制御、呼吸循環の調節など生命維持に重要な機能を持つ部位であり、これらのつながりから、痛み系と自律系、運動系のつながりが神経解剖学的に証明されていることがわかる
    • この伝導路は痛覚抑制系にも関係あり
  • 過剰な痛み入力
    • γ系の活動が亢進し、筋収縮が持続ー血流阻害、嫌気代謝ー局所のアシドーシス、ポリモーダル受容器の感受性の増大ー痛みの悪循環
    • 最終的に筋に影響を及ぼすことに留意し、動的要素である筋を標的とする理学療法士は、痛みのもたらす筋障害に機序をふまえ、評価や治療をみなおす必要がある。
  • 痛覚増強
    • 痛覚受容器自体の感受性が過度に高まる 一次性痛覚増強 末梢性感作
    • 感覚伝達が促進されること 二次性痛覚増強 中枢性感作
  • 2種類の生理的な痛みがあること、痛みは感覚性側面だけでなく、情動的側面があること、体内には鎮痛性機構が備わっていることなどを理解することは、痛みへのアプローチに欠かせない
  • 痛み患者に直面した際、末梢の現象と捉えるのではなく、中枢を含めた全身現象として捉えることの重要性が、生理的な痛覚系から学ぶことができる