倉田二郎 痛みの脳内イメージング研究 Pain clinic 2006;27(12):1518-1527

  • 脳機能イメージング研究の原理
    • 神経活動の増大に伴い、その酸素およびブドウ糖代謝が増加し、同時に、その近傍の血管が拡張し脳血流が増大する
    • PET,SPECT-ブドウ糖代謝や血流変化を検出
    • fMRI-放射性同位元素を使用せずに脳血流変化を捉える(血液中のヘモグロビンを内因性造影剤として利用)
    • 神経活動を増したニューロン周囲のヘモグロビン酸素飽和度が増加すると,T2*強調磁気共鳴信号が増加する。その結果生まれる信号変化を、blood oxygeneation level-dependent (BOLD) contrastと呼ぶ
  • 痛みにより活性化する脳部位 pain matrix
  • 痛みの三要素
    • 感覚弁別要素 痛みの位置、強さ、性質
    • 情動動機要素 痛みの不快感、いやさ
    • 認知評価要素 痛みの評価
  • 侵害受容系
    • 外側侵害受容系 外側視床核ー第一次、第二次感覚皮質 痛みの弁別的要素
    • 内側侵害受容系 内側視床核ー前帯状皮質前頭皮質 痛みの情動認知要素
  • 痛み関連脳部位
    • 視床 末梢から脳へ向かうすべての感覚情報が中継される
    • 第一次感覚皮質 SI
    • 第二次感覚皮質 SII
    • 島皮質
    • 帯状皮質 痛みの情動要素に強く関連
    • 前頭皮質 痛みの情動認知要素に関連
    • 補足運動野 痛みに対する逃避行動に関連
    • 大脳基底核 痛みに対する逃避行動に関連
  • 下行性抑制系
  • 痛み関連脳活動の階層構造
    • 痛みには、下位の末梢神経から上位の脳まで到達するbottom-up感覚情報と、それに反応して上位の脳に発生するtop-down脳活動との両者が関与する
    • bottom-upの要素の割合が大きいのは外側侵害受容系で、top-downの要素が大きいのは内側侵害受容系
    • 実験的allodynia modelではtop-down脳活動を担う内側侵害受容系の活動が以上に亢進
    • 慢性腰痛患者では同じ内側侵害受容系が、健常者に比べて、また罹患期間が長いほど萎縮する傾向がある。
  • 期待情動注意と痛み
    • 痛みが来るという期待だけで、痛みを認知する脳部位が活動する
    • 痛みから注意をそらすことにより、PAGを起始点とする下行性抑制系が賦活され、脊髄から視床への侵害伝達系が抑制される可能性

倉田二郎 疼痛研究と慢性疼痛治療におけるfMRIの役割 ペインクリニック 2005;26(1):15-23

  • functional brain imagig - PET/SPECT/fMRI
  • 神経活動増加に伴い局所脳血流が増加した部位では、いわばluxury perfusionにより血液酸素飽和度が増加し、MRI信号が増強する。この現象はblood oxygenation level-dependent (BOLD) 効果と呼ばれることになった
  • fMRIの利点 放射性トレーサ不要、高い時間分解能、高い空間分解能 1.5-3mmのvoxel size
  • fMRIの欠点 BOLD信号はあくまでも脳血流変化の間接的相対的指標で、PETのような絶対的脳血流脳代謝の指標をえられない
  • 空気と脂肪が接する構造物の近傍では画像の歪みあり
  • pain matrix
    • 第一次感覚皮質、第二次感覚皮質、島皮質、前帯状皮質前頭皮質
    • Melzackが分類した疼痛の3要素(弁別、情動、認知)をそれぞれ担う形で、全体として疼痛という現象を成立させている
    • 弁別 S1,2,IC 情動 ACC 認知 PFC
    • S1,2,ICは外側視床核からの投射を受けlateral nociceptive systemを
    • ACC,PCCは内側視床核からの投射を受けmedial nociceptive systemを構成する
  • 疼痛に置けるtop-down脳活動の役割
  • 慢性疼痛における脳活動の特徴
    • PET 患部と反対側の視床血流の低下 過剰な侵害受容入力に対し、視床レベルで過剰に抑制が働いている
    • PET heat allodyia model, medial nociceptive systemを構成する内側視床,ACCからPFCにいたる経路において、疼痛関連脳活動が異常に更新
    • fMRI 慢性腰痛患者 罹患期間が長くなるほど新皮質灰白質体積が減少、特に前頭皮質および右視床灰白質体積が減少