荻野祐一、根本英徳、斉藤繁、後藤文夫、乾幸二、柿木隆介 痛みの感情側面と痛覚認知 日本ペインクリニック学会誌 2008;15(1):1-6

  • 痛み関連脳領域(pain-related brain regions)/ペインマトリックス(pain matrix)
  • Tsuji ヒトの脊髄では2つの異なる経路が、それぞれ異なった伝導速度で侵害情報を伝えている、またそれぞれに脊髄視床路が視床の異なる部位を通って痛み関連脳領域に情報を伝えている
    • 内側系 脊髄後角第I層、視床のVMpoを通り、視床辺縁系へ (lamina I-VMpo-Insula pathway) 痛みの感情的側面や自立神経系
    • 外側系 脊髄後角第V層、視床のVPL核を経由し、第一次体性感覚野に至る(lamina V-VPL-SI pathway) 痛みの判別的側面(痛みの強さや場所)
  • 他人の痛みを痛そうと共感するだけでは、痛みの感情面に関する痛み関連脳領域しか活動しないが、自分の痛みとして想像した場合には、それにらに加えて痛みの感覚的、判別的側面に関する痛み関連脳領域の活動が加わってくる
  • 板民お感情に伴う脳活動領域のうち、前帯状回は、恐怖、嫌悪、怒りなどの活性化される脳領域と共有している。
  • うつ病や社会的疎外感は疼痛を増強させる因子である。
  • Koyama et al
    • fMRI 痛みを少ないと予想しているときには、主観的な痛みの強さと痛み関連脳領域の活動の両方が、実際の痛みよりも抑制されていることを、初めて科学的に証明した。
  • ヨガマスター
    • ヨガの達人は、身体や舌に針を刺しても痛みを感じない
    • 中脳被蓋部は痛覚の下行系抑制路の重要な部位であり、この部位の血流増加は瞑想中の下行性抑制路の著明な活性化を示している可能性がある
  • 痛み関連脳領域は、侵害刺激だけではなく、痛みのイメージ、うつ病に伴う心の痛み、や幻肢痛などでも活性化されることが明らかになっている
  • さらに暗示や瞑想などにより、侵害刺激による痛み関連脳領域の活性化の抑制現象も確認されている。
  • これらの機能的脳画像診断法による新しい知見は、痛みの診断や治療に有用な新しい視点を提供すると考えられる