中井吉英、町田英世、阿部哲也 心と痛み 整形外科 2007;51(8):893-896

  • 過敏性腸症候群はかつては大腸神経症と呼ばれたこともあった。しかし現在は機能性腸症候群の代表的疾患として世界的に認知されている
  • 疼痛に対する米国精神医学会の診断基準の変遷
    • DSM-III 心因性疼痛障害 psychogenic pain disorder
      • 心理的要因が病因に関与している疼痛、身体的要因の関与は否定
    • DSM-IIIR 身体表現性疼痛障害 somatoform pain disorder
      • 6ヶ月以上の疼痛持続時間を設定。疼痛に関連する器質的病変の存在がDSM-IIIの基準に付け加えられ、身体的所見に比べて過度な痛みの訴えと社会的、職業的障害に重点が置かれた
    • DSM-IV 疼痛障害 pain disorder
      • 一つまたはそれ以上の解剖学的部位のおける疼痛が臨床上の中心を占めており、臨床的関与に値するほど重篤であるとし、疼痛の原因を器質的要因か心理的要因かに区別せず、心理的要因にも発症や増悪持続の要因としてとらえ、患者の社会的職業的、そのほかの機能の障害に焦点が置かれた。6ヶ月未満を急性、6ヶ月以上を慢性と定める。
  • 神経学的以上を示す慢性の腰痛と、神経学低に異常を示さない慢性の腰痛は、MMPIにて区別することができなかった。
  • Barnes MMPIにおける性格特性は慢性疼痛の結果であり、慢性疼痛に先行するか進展させやすい心理的素因ではない
  • 慢性疼痛に陥る患者の心理がすべて二次的であると結論するのは早急
  • Loeserの多層モデル 疼痛pain, 苦痛情緒反応suffering, 疼痛行動pain behavior
  • 慢性疼痛患者ではしばしば周囲を巻き込み、痛みが維持されうるシステムが形成される
  • システム論をもちいた治療では、患者にもっとも影響のある家族を治療対象とする場合がある
  • システム論的な視点では、原因ー結果という直線的、因果論的見方をせず、さまざまなシステム相互間の影響も含めた悪循環の連鎖として把握する
  • 痛みを持続、増悪させている悪循環の連鎖を緩和させることができれば、システムが本来有している自然治癒力が働き、その蹴った痛みが消失しうるわけである
  • 慢性疼痛の治療はcureからcareに治療の視座が移らなければならない。したがって、治療の要点は、疼痛の処置やQOLを重視するリハビリテーションに患者の情動、疼痛行動を加えた疼痛システムとしての病態の把握と、集学的な治療の構造化が重要である。