慢性疼痛はどこまで解明されたか3

菅原努監修 慢性疼痛はどこまで解明されたか 昭和堂 2005 ISBN:4812205085

p73 仙波恵美子 痛みのメカニズムの解明

  • 慢性痛 組織の傷や炎症が治癒したにもかかわらず持続する痛みや、あるいは容易に治癒することが望めない神経の損傷による痛みなど、もはや生体警告系としての意義を失った無用な痛みである
  • これまでの痛みの基礎研究は、末梢神経、一次知覚伝達系、脊髄後角に集中しすぎていたきらいがあるが、視床、大脳皮質、辺縁系など上位脳の関与についての研究は、最近急速に発展している。
  • 痛みの基礎研究
    • カプサイシン受容体(TRPV1)をはじめとする末梢での痛覚受容器の研究の進展
    • NGF,BDNF,NT-3などの神経栄養因子は痛覚、触覚、固有感覚などの体性感覚の受容システムの形成に中心的な役割を果たしている
    • 5-HT2A受容体アンタゴニストの投与が帯状疱疹後神経痛、CRPSなどの難治性疼痛に有効という報告あり
    • 損傷神経と非損傷神経の混在
    • 脊髄後角でのグリアの活性化
    • ストレスにより下行性疼痛抑制系が賦活化 例 戦闘中や競技中は痛みを感じない
    • 下行性疼痛抑制系の活性化に働く要因の一つの、視床下部弓状核
  • 痛みの三つの側面
    • 感覚ー識別的評価 痛みの部位、強度、持続などの分析
    • 感情ー情動的側面 痛みによっとおこる不快な感情
    • 認知ー評価的側面 経験した痛みの記憶に関連し、注意を集中しているか、予知しているかで痛いの感じ方が影響をうける
  • PET,fMRIで痛みにより脳のどこが興奮するかということが、ヒトの脳で検討されるようになった
  • 脳imagingで、刺激の強さと反応の強さがパラレルに動くのところは,S1,S2,IC,ACC,補足運動野