雑誌 痛みと臨床2

細川豊史 神経因性疼痛(ニューロパシックペイン)の機序 痛みと臨床 2003;3(1):2-9

  • 神経因性疼痛とは、神経系の損傷あるいは機能異常によって生じる疼痛
  • 神経因性疼痛の発現には末梢神経系、中枢神経系、交感神経系の機能的、器質的変化が複雑に関与している
    • 末梢神経系の変化 機能的 神経損傷部位における障害電位の発生、異所性興奮、エファプス 器質的 神経腫形成、神経の発芽、α2アドレナジック受容体の発現と増加など
    • 中枢神経系の変化 脊髄後角の感受性増大、下行性抑制系の変化、神経系の再構築、脊髄後角の異常発火、情緒的精神的変調、大脳皮質感覚野の再構築
    • 交感神経系の変化 交感神経節後線維からのPG産生、痛覚神経後根神経節での交感神経の発芽
  • エファプス ephapse 正常なシナプス以外のところで神経線維が電気的もしくは科学的に連絡されるようになること、つまり短絡を生じた部位
  • 侵害刺激 組織を障害し、痛みを生じるような刺激を侵害刺激noxious stimuliと呼称する。、熱刺激heat、冷刺激cold、機械的刺激mechanical、化学的chemicalなどがある
  • 侵害受容器 侵害刺激をまず受容するのが一次性求心性神経線維(痛覚線維)の末梢に存在する感覚終末器が侵害受容器であるnociceptor

楠淳一、斎藤豊和 神経因性疼痛の病期と性状 痛みと臨床 2003;3(1):18-25

  • 疼痛伝達路は末梢受容体から、第一、第二、第三ニューロンを経て大脳皮質感覚野へ伝達されるが、これらの経路のどの障害でも疼痛が生じる
  • 神経因性疼痛は傷害部位により、中枢性疼痛と末梢性疼痛に分類可能である
  • 神経因性疼痛の大半は末梢性神経障害である。急性、亜急性の末梢神経障害はほぼ前例でしびれ感や疼痛をみとめる
    • 痛みを伝える末梢神経線維は有髄神経のうちAσ線維、無髄で細いC線維からなる
    • 特異的侵害受容ニューロン nociceptive specific neuron NS
    • 広作動域ニューロン wide dynamic range neruron 触刺激から痛み刺激に段階的に反応する

齊藤洋司 疼痛発生のメカニズム総論 痛みと臨床 2003;3(1):51-55

  • 侵害受容器は侵害受容線維(一次求心線維)の神経終末
  • 痛みを伝える一次求心線維にはAδ線維とC線維がある
  • Aδ線維 有髄線維のなかで最も細く、伝達速度は12-30m/s
  • C線維 無髄線維でAδ線維より細い 伝導速度は0.5-2m/s
  • 侵害受容器には特定の侵害刺激に反応する高閾値受容器と、機械刺激、化学的刺激、熱刺激のいづれの刺激にも反応するポリモーダル受容器がある。
  • 一次求心線維の神経細胞体は脊髄後根神経節に存在し、末梢と脊髄の両側へ線維を伸ばしている
  • 中枢側は脊髄灰白質に細胞体をもつ二次侵害受容ニューロンシナプス結合する
    • 侵害受容ニューロンは、特異的侵害受容ニューロンと広作動域ニューロンが存在し、末梢の刺激を中継する
      • 特異的侵害受容ニューロン 体表に比較的狭い末梢受容野を持ち、侵害刺激に反応するが、非侵害刺激に反応しない
      • 広作動域ニューロン より広い末梢受容野を持ち、侵害、非侵害刺激の両方に反応
    • 二次侵害受容ニューロンの上行線維は1-3分節上位で対側に入り、脊髄視床路として視床に入る
    • 侵害刺激情報は、さらに視床の後外側腹側核などを経由して大脳皮質中心後回の体性感覚野、ならびに大脳辺縁系をふくめた大脳の広範な領域に伝えられて、最終的に痛みとして認知される

真下節 神経因性疼痛発生のメカニズム 痛みと臨床 2003;3(1):61-71

  • 神経因性疼痛は、末梢または中枢神経系の求心性痛覚伝導路の損傷によって引き起こされる疼痛系の病的変化によって発症する慢性疼痛
  • 変化が起こる部位
  • 変化の内容
    • 末梢知覚神経、脊髄後角、視床および大脳皮質知覚野におけるニューロンの感受性増大(感作)
    • 各レベルにおける発芽現象をふくむ神経再構築
    • 脱抑制を伴う疼痛抑制系の変化
    • 情動的精神的変調
  • いわゆるAβ線維のC線維化がおこり、本来触覚などを伝える低閾値作動性Aβ線維がサブスタンスPや

CGRPを産生放出するようになり、痛みの伝導路となる - 脊髄後角II層ニューロンが求心性の低閾値神経からの信号をうけとることとなり、非侵害性機械的刺激の脳への投射によってアロディニアが発症