慢性疼痛の集学的リハビリテーション医療の実際

高橋紀代 慢性疼痛の集学的リハビリテーション医療の実際 journal of clinical rehabilitation 31(7):783-787,2022

  • 慢性痛の診療(患者教育)
  • 心理的要素(感情、気分、睡眠等)が慢性痛にどのように関連しているかの患者に知識は十分でなく、多くの患者は痛みがあると、身体に悪い部分があり、原因は身体だけと考え、心理的な影響を考慮することはほぼない。
  • そのため、この知識のギャップを埋める教育が非常に重要になってくる
  • また、慢性痛治療の焦点は、痛みを完全になくすことではなく行動やQOLの改善にあることを患者が理解することも、治療を進めていくうえで重要となる。
  • そのため、慢性痛の診療には患者の心理的特徴を考慮しつつ、病態理解を促し、治療に主体的に取り組む姿勢を育む患者教育が必要である
  • いったん、痛みが身体の組織損傷を正確に反映していると信じ込んでしまうと、痛みと関連した恐怖を克服することは困難である
  • それを踏まえて、最初の治療目標を、「患者が自分の痛みは、身体の構造的または物理的な問題ではなく、中枢神経のプロセスによるものであるという考えを受容できるように導くこと」としたプログラムがあり、慢性腰痛の治療に効果をあげている。

慢性疼痛の病態と機序

柴田政彦 慢性疼痛の病態と機序 journal of clinical rehabilitation 31(4):347-351

  • 慢性疼痛とは、「外傷や疾病が治癒した後も続く痛み」あるいは「3ヶ月ないし6ヶ月続く痛み」と定義されている。多くの病気や外傷に伴って痛みが生じ、時として慢性化する。慢性疼痛の概念はやや曖昧であるのは事実であり、明確に定義するのは無理があるが、「身体の危険と釣り合わない痛み」と考えるとわかりやすい
  • 神経科学の進歩によって痛みの慢性化の仕組みの解明が進んだことは事実ではあるが、そのほとんどは動物実験に基づいたものであり、実際の慢性疼痛患者に当てはまるかどうかは確かめられていない
  • 痛みに関連する脳内機序は古くから知られており、痛覚伝達に関する視床、前部帯状回、島皮質、二次体性感覚野等が関わると考えられてきた
  • しかしこれらペインマトリックスと呼ばれる脳内部位は新奇的な視覚や聴覚等痛み以外の感覚によっても活動することが示され、saliency networkとほぼ一致する。ペインパトリックすは、馴染みのない新奇的な刺激、言い換えると生体にとって危険なさまざまな刺激に気づく過程で生じる共通の脳の反応と解釈できる。つまり、危険を察知して回避することに関連した受動的な脳の反応である
  • 一方、運動時痛という能動的な痛みは、危険を回避することが学習したり創傷の治癒を促進するために運動を抑制するために備わった仕組みであると考えられるので、saliency networkとは異なる脳内機序が考えられる
  • 同じ「痛み」であっても今までの研究が扱ってきた外的な刺激に伴う痛みと能動的な動きに伴う痛みとでは関与する脳部位が異なっており、運動時痛の脳内機序がさらに明らかになれば、運動療法が慢性痛の治療に効果をもつメカニズムの解明につながることが期待できる

痛み・しびれにおける心理社会的要因の診かた

寺嶋祐貴、西原真理、牛田享宏 痛み・しびれにおける心理社会的要因の診かた MB Orthop 33(3):64-72,2020

  • 患者が痛みを訴えるとき、当然、何らかの侵害刺激による痛みが原因であることが多いが、多くの臨床医を悩ますのは、そこに器質的要因以外のものがどの程度関与しているかを評価することである
  • 身体症状症の新しい診断基準で特徴的であるのは、疼痛という症状に対して不釣り合いな思考、強い不安、過度な行動のいずれかが存在していることを主体としていることである。器質的な疾患の有無を問わない点も重要である。器質的疾患があったとしても極端に逸脱した行動がみられれば身体症状症と診断が可能であり、より臨床的に使用しやすい病名となっている
  • 小児の発達と痛みの関連のなかでも失感情症(alexithymia)については留意する必要がある。自分の感情がどのようなものであるか言葉で表したり、情動が喚起されたことによってもたらされる感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難な病態である。身体の痛みと心の痛み(驚き、不安、悲しみ、悔しさなど)が区別できなくなると、弁別せず単に「不快な情動=痛み」という言葉として捉えてしまう。日常生活の表出できないストレスが常時痛みとなって表出されるため、過度な医療(絆創膏にかわって神経ブロックといった物理的な医療介入)をもとめる傾向になりやすい。これらは大人の心身症患者においてもしばしばみられるが、このような病態に対してはチームで分析した上で、治療者は常に患者を客観的に評価し、いかにして自己解決の報告に持ち込むかを考えていく必要がある
  • 社会的要因
    • 疼痛行動、疾病利得、家族問題・職場問題、補償問題

UTM/windows 11 ARM

  • macbook air M1の仮想環境としてUTMが下記に紹介されていたので試してみた
  • original-game.com
  • 上記のとおりで、windows 11 ARMの仮想環境をM1 macbook airに構築することができた
  • vmware fusion tech previewと異なり、ファイル共有に対応していた
  • 一点引っかかったのはfunction key
  • 仮想環境でf10やshift+f10を押す必要があったが、defaultでは音量が変わったのみだった
  • システム環境設定/キーボード/F1,F1などのキーを標準のファンクションキーとして使用をチェックすると解決する

vmware fusion tech preview / windows 11 ARM insider preview

慢性疼痛と疼痛性障害のペイシャント・エンパワーメント

堀川直史 慢性疼痛と疼痛性障害のペイシャント・エンパワーメント 臨床精神医学 2013;42(6):749-755

  • ペイシャント・エンパワーメントは「患者が自分の病気の診療について自己決定し、責任の一部をもつようになること」あるいは「患者に自己決定を促し、それを尊重すること」という意味になる
  • 疼痛性障害のマネジメントとペイシャント・エンパワーメントの関係
  • 1 疼痛とその苦痛、患者の置かれた苦境などを聞いて理解する
  • 2 「すぐにちろうがい必要な重い病気はない」と伝える
  • 3 疼痛性障害という病名をはっきりと伝える
  • 4 病態について簡潔に説明する(「疼痛に注意が向かうことによって疼痛がさらに強まるという悪循環が生じている」という説明は患者に伝わりやすい)
  • 5 この病気の治療ができること、「急にというわけにはいかないが、痛みは必ず軽くなる」ことを伝え、治療を受けるように勧める
  • 6 予約診察として、「必要に応じて受診する」という診察形態を避ける
  • 7 なるべく入院を避ける
  • 8 抗うつ薬(主にセレトニン・ノルアドレナリン再吸収取り込み阻害薬)を処方する
  • 9 少しづつ可能な運動を開始する
  • 10 認知行動療法の併用を考える
  • 11 患者がストレス因子について話すようになったら、それを聞いて理解し、対策を相談する
  • 12 家族にも、患者と同じように対応する
  • 13 精神科医が症状を早く取ろうと焦らない
  • 14 精神科医は自分の陰性感情を自覚し、このような患者をみることも医師の一部であることを割り切る

筋骨格系問題への取り組み クリニックおよび職場での手引き