機能的脳画像診断機器

倉田二郎:機能的脳画像診断機器ー痛み脳バイオマーカーを提示するマルチモーダル磁気共鳴画像法の臨床応用ー. 麻酔, 63:737-742.

  • 慢性痛が成立するメカニズム 3つ
    • 末梢神経から脊髄へと痛みが伝達される経路が増強される場合
    • 末梢神経から脊髄・脳のいずれかの場所で、神経そのものが障害をうける場合
    • 誘引としての急性痛がなく、かつ神経そのものの障害が明らかな出ない場合
  • 痛みには弁別、情動、認知という3要素が含まれる
  • 脳はこれらの要素を複数の離れた場所で分散して処理し統合することにより”痛み”という体験を生み出す
  • 痛みの位置と強さと弁別 外側侵害受容系(外側視床核、第一次、第二次感覚皮質、島皮質)
  • 痛みの情動、認知 内側侵害受容系(内側視床核、島皮質、前帯状皮質前頭皮質
  • 痛みを避けよう、解決しようとする運動成分 補足運動野、運動前野、大脳基底核
  • 病的疼痛は外側・内側侵害受容系における過剰な神経活動と関連する可能性がある
  • 特殊な設備や刺激方法を必要としないMRI技術 resting-state fMRI, voxel-based morphometry
  • Default mode networkとは、後帯状皮質、頭頂皮質、眼窩前頭皮質などを中心とするネットワークで、さまざまな認知タスクや刺激に対して、一様に神経活動低下ないし脳血流低下を呈する場所である。意識状態、内省、認知機能に深く関わると考えられている
  • 慢性痛では側坐核を中心とする報酬系の機能不全が示唆されている。側坐核と内側前頭皮質との機能的結合性を慢性腰痛患者の予後と相関分析した結果、この機能的結合性が高いほど難治性であることが報告された。このネットワークの機能が痛みの面成果に大きな影響を及ぼすことが示唆された
  • 痛みによる脳機能・解剖変化 筆者は、これは原因と結果の両方の要素を含んでおり、慢性痛が形成される局面によりその割合が異なると考えている