原因不明の慢性疼痛に対する行動療法

笠原諭 原因不明の慢性疼痛に対する行動療法 精神看護 2018;21(1):44-61

  • 痛みの存在を周囲に知らせるためのこうした行動を「痛み行動」といいます。
  • 慢性疼痛では体のダメージがないにもかかわらず、アラーム信号が鳴り続けていると脳が勘違いしている状態です。
  • 私は多くの患者さんの診療に携わるうちに、患者さんが示す「痛み行動」の水面下にはもっと大事な「痛み行動に至る仕組みが隠されているのではないかと考えるようになりました。
  • 遺伝的にドパミンシステムの機能低下があって情緒に不安定になりやすい個人が、生まれ落ちた家庭環境を生き抜くために特定のパーソナリティ(例えば完璧主義など)を獲得し、そのパーソナリティ特性と社会とのかかわり合い(痛みがあることで、完璧にできなくても許されるなど)のなかで痛み行動が維持されるのではないかという考え方です。私はこれが慢性疼痛の心理社会的要因とされる部分の”全体”像だと考えています
  • システムズアプローチ 全体は部分に影響を与え、部分は全体に影響を与える
  • 昔は、慢性の痛みというのは「急性の痛みが継続したものか再発したもの」であり、「そうでなければ気持ちの問題」というような暗黙の了解が医師たちの間にありました
  • 米国シアトルの心理学者、ウィルバート・フォーダイスが、痛みの理解に「オペラント条件づけ理論」という学習理論を導入して、発想の転換をもたらした
  • フォーダイスがいったのは、「慢性の痛みにおける治療の対象は、”痛み感覚”それ自体ではなくて、”痛み行動”である」ということです
  • オペラント条件づけは、無意識に生じつ脳の自動学習。
  • 「痛み行動」増えるほど、脳は辻褄を合わせるようにそれに見合った痛みを感じてしまうのです
  • 行動というのは、”没収”と”ルール”とそのあとにくっついてくる”報酬”の3つの変数によって決まってくる関数であると言える
  • 「痛み行動」を「健康行動」で置き換えていく。これをオペラント行動療法といいます
  • スキナーは、我々の学習行動の原因は、行動の「前」ではなくて、「後」にあるということを発見した
  • 「痛い痛い」と痛みを訴える人が目の前にいるとき、原因がみつからないと、これはこの人の未熟な性格が原因だ、”心因”によるものだという話になり、相手を責めるような感情がでてきやすくなる。これが問題をこじれさせてしまいます。しかしスキナーがいうように、環境の働きかけによって挨拶するようになったと考えれば、相手の行動を変えるのに、相手の性格などを変える必要は全くないことになります。周囲からの働きかけが変わればその人の行動は変わりうる、という発想がでてくるのです。
  • この患者さんは過去に心療内科や思春期外来でカウンセリングも受けており、”本人の内面を変える”というアプローチを受けましたがうまくいっていませんでした。
  • 治療のゴールは、痛みをなくすことでなく、社会生活を充実させること
  • 行動療法では、行動パターンのなかの例外を見つけていくことが大切
  • オペラント行動療法はどのような患者さんに適応になるのか
  • MPI multidimensional pain inventory
  • MPIは、ある患者さんにどういう治療をやったらよくなったかという治療の反応性によって(すなわち結果から)患者さんを分類したもの
  • DYS型、ID型、AC型
  • DYS型が飛び込むべきなのは、「過保護のない生活」であり、ID型の人が飛び込むべきなのは「自己主張による対立の恐怖」です。