粳間剛 プラセボ反応とノセボ反応の話 地域リハ 2017;12(11):952-959
- 腰椎圧迫骨折の患者さん対象に、針を刺してセメント注入群と、針だけを刺す群で治療結果に差がなかった
- Kallmed DF et a: A randomized trial of vertebroplasty for osteoprorotic spinal fractures. N Eng J Med 2009:361:569-579
- (無治療群がないので、自然経過である可能性も否定できない
- 手術されたと思わせるだけで、実際は一部の手技を省略した意味がないはずのダミー手術はプラセボ手術とも呼ばれる
- プラセボ手術によるプラセボ反応は、除痛・機能改善などの効果が偽薬と比べても非常に高い
- プラセボ薬が使われる典型は、医療者グループの誰かがその患者を強く嫌っているときであるというデータがある
- プラセボ反応が見られたら精神的なモノとみなして良いと誤解している人が多いこともわかっている
- Goodwin JS et al:Knowledge and use of placebos by house officers and nurses. Ann Intern Med 1979:91:106-110
- 患者さんにプラセボ効果が起きやすくなる条件
- 治療や支援に納得し、その効果を期待している
- 医療者や支援者を信頼している(思いやりを感じている)
- 病気を自分でコントロールできる自信がある
- 実際にプラセボ反応が起きやすい条件は、患者さんが医療者を信じ、納得して、治療の効果に期待を持っている時などです。(患者さんの性格ではなく、そういう条件が整った時)
- 治療効果=治療の持つ真の効果+プラセボ効果
- どこまでが真実の効果で、どこまでがプラセボ効果なのかは、どんな名医も判断できない
- むしろ名医ほど患者のプラセボ効果を引き出してしまうので真薬だけの効果を経験しにくいとも言われる
- 隠さなくてもプラセボ反応はでる
- ヨネさんに説明した内容は、「痛み止めの注射を続けていると、そのうち、痛み止めを含まない注射を使っただけでも、痛みが和らぐ人がいます。ヨネさんはそういう患者さんの条件を満たしているので、痛み止めを含まない注射に変えてみませんか」です
- 世の中には、「あなたにはプラセボ薬を使います」と言って、本当にプラセボ薬を使って、その経過を調べている実験(オープンプラセボ試験)や、言葉(suggestion)だけのプラセボ研究おあります。よっていずれも「期待だけの効果」と言えます。
- プラセボ反応を、偽薬の反応が起こすなんだか悪いモノとして捉えているからそうなる。「期待の力と経験によって引き起こされる自然治癒力と捉えるといい」
- いくつかの研究で、「患者が診察を受けたあと回復するかどうかは、初診の際に医師がよく話を聞いてくれたと患者が感じるかどうかによる」ことが明らかにされています。
- Brody H: The placebo Response. Caroline Myss, Crown Publishers, 1997
- また、一ヶ月後に患者さんに同じ病気について尋ねた時、「良くなったと答えるかどうかを一番正確に予測できる要素」は、「初回の診察で病状を説明する自分の話を医師が十分に聞いてくれた、と患者が言ったかどうか」という報告もあります
- Bass MJ et al: The physician's actions and the outcome of illness in family practice. J Fam Pract 1986;23:43-47
- 医療への不信感と悪い経験によって、病態を悪化させる反応、「ノセボ反応」です。