加藤総夫 痛みと情動の生物学的基盤 最新精神医学 2017;22(2):93-102
- 痛みのマトリクス 1-4の総体が、我々の痛み体験を形成すると認識されるに到った
- 1 あらゆる痛みに共通の単一の「痛み中枢」は存在しない
- 2 むしろ、侵害受容入力は、きわめて多くの広範な脳領域を分散的に活性化する
- 3 予想に反して、図1にあるような「古典的痛みの経路」の活性化PTTは相対的に低い
- 4 さまざまな痛みの状況(たとえば誘発痛と自発痛)や、異なる種類の痛み(たとえば慢性痛と急性痛)ごとに、活性化する領域は異なっている
- 痛みで活性化する脳領域
- 扁桃体は、侵害受容によって誘発される情動学習である「条件恐怖反応」の獲得における中心的脳部位であることが確立している
- ヒト扁桃体は、恐怖・不安・抑うつ・嫌悪などの「陰性情動」に関与すうるとともに抗うつ薬の重要な標的である
- ヒトの先天性両側扁桃体障害は恐怖情動の認知の低下や、対人距離に対する評価異常などをもたらす
- 心的外傷ストレス障害(PTSD)患者の扁桃体は機能的・形態的異常を示す
- 対人関係に障害を持つ広汎性発達障害にも扁桃体の関与が示唆されている
- 「直接」神経連絡はBernardらのグループによって同定され「脊髄ー腕傍核ー扁桃体路」と呼ばれている
- 扁桃体中心核外包部は侵害受容性扁桃体と呼ばれている
- 脊髄ー腕傍核ー扁桃体路が、視床や皮質などの一般体性感覚と同様の分析過程をバイパスして、直接的に「有害性警告」情報を脳に誘発させる機構である可能性を示している
- 外側上行路(外側視床核ー体性感覚皮質) 痛みの感覚・弁別的要素
- 内側上行路(内側視床核ー前帯状回皮質) 痛みの情動的要素
- 第3の経路 脊髄ー腕傍核ー扁桃体路 侵害受容情報の生物学的本質である「有害性を生体に警告する」という機能に直接関与する古い系であると考えられる
- 痛みは非常に強力な脳内可塑性誘発性因子であるといってよい
- 情動の中枢とされている扁桃体の活動が、末梢の侵害受容閾値を調整している可能性を示唆