慢性疼痛と幼少期の体験

慢性疼痛と幼少期の体験 ペインクリニック 2017;38(8):1025-1026

  • 幼少期の体験が成年後に与える情動行動面への影響について、近年、医学領域でも注目されてきている
  • 知的障害については、その後の英国のあたたかいケアを受けるなかで改善したが、6ヶ月以上の長期間、劣悪な環境で生育された群では、自閉症傾向、脱抑制、注意障害と多動については各観察時点で有意に高いスコアとなっていた。さらに興味深いことに、観察の3群で15歳時までは情緒障害の差は目立たなかったが、22-25歳のヤングアダルトの時期になると、幼少期に6ヶ月以上の劣悪な環境にいた群で、情緒障害のスコアが急激に上昇していた
  • 言い換えると、「幼少期に温かみのある養育をうけていないとIQはその後のケアで改善できるが、EQにおいては成年後に問題が生じる」ともいえるであろう。(IQ: 知能指数 EQ:Emotional Intelligence Quotient こころの知能指数)
  • 慢性疼痛の難治症例は知的には優れていることも多いが、情緒的な苦しみが成年後に発症し、睡眠障害や情緒的な問題が持続していく経過中に痛みが発症していることも多い
  • 人生の様々なステージで適応努力を続けるうちは意識的な活動で紛れている過去の苦悩が、20歳、40歳、60歳といった人生のステージが変化した後の平穏な時期に、器質的・機能的な身体の痛みに加えて、過去のトラウマ体験にまつわる脳活動が安静時の脳活動に混線し、より不快な心身の痛み体験となる可能性があると筆者は考えている