身体症状症の概念

磯村周一、鬼塚俊明 身体症状症の概念 精神科治療学 2017;32(8):991-995

  • 新たな診断基準(DSM-V)の要諦は、以前のように身体症状に対して医学的説明が出来ないことを強調するのではなく、むしろ陽性の症状および兆候(苦痛を伴う身体症状に加えて、そうした症状に対する反応としての異常な思考、感情および行動)に基づくという点にある
  • 医学的に説明ができないことが過度に強調されると、おそらく、自分自身の身体症状が”本物”ではないことを意味する診断を、その人達は軽蔑的で屈辱的なものであると考えるだろう
  • 一臨床医として私見を述べると、確かにDSM-5における身体症状症は、「医学的に説明できないと判断するためにどこまで身体的精査をすべきか?」などと悩まずにすむ。
  • また患者の病名について説明する際に「身体表現性」というと、どうしても否定的なニュアンスで受け止められることがあるが、「身体症状症」と伝えるほうが価値判断を挟まない中立的な響きを持つように思う
  • 2013ねnInselは妥当性を欠く原稿のDSM分類は臨床研究には用いるべきでないとして、新しい診断基準であるResearch Domain Criteria (RDoC)を提唱した。これは、精神症候学によって分類される原稿の操作的診断を認めず、精神障害は認知、情動、行動など複数のドメインにわたる脳回路の生物学的障害であるとして、そのドメインを解析することにより生物学的に妥当な分類を目指すものであるという