痛みと関連した症例の経験

本島昭洋 痛みと関連とした症例の経験 臨床精神医学 1996;25(12):1489-1495

  • Kleinmanによると、病とは経験であるが、痛みのなかには、実につらく苦渋に満ちた経験があると考えられた
  • Heibronnらは、pain pron disorderと名付けて特徴を上げている
  • 臨床的特徴
  • 1 持続する痛み 2 外科的処置への願望 3 感情や人間関係の問題の否定 4 家族関係の理想化 5 疼痛発現以前の過度の活動性 6 疼痛発現後の可動の受動性 7 他の抑うつ的特徴;不惑、不眠
  • 心理的特徴
  • 1 葛藤の隠蔽と否定 2 依存や保護の幼児的な要求 3 著名な受動性とマゾヒズム 4 怒りや敵意への対処能力の欠如 5 罪悪感
  • 患者は痛みに苦しんでいる人間であって、望んでいるのは痛みからの解放であることを理解しなければならない。患者の語ることに耳を傾け、不信感や怒りをも含めて受容することが必要であり、さらに併存する不安や抑うつに対する支持的対応を行いながら、治療への導入を図る
  • 精神面でのアプローチとしては、1痛みを軽減させるための援助は行うが治療主体は患者自身であること、2慢性化した痛みは軽減はするが完全には消失させるのは難しいこと、3痛みにとらわれた状態にありそのために悪化させている可能性があること、4痛みのそのものよりそれに伴った感情や行動に問題があること、5痛みの消失よりも生活の質の改善を目指した治療を行うとなどを患者を含めて確認する