「慢性痛の心理アセスメント:私の診療現場から」を読んで

島敏光 「慢性痛の心理アセスメント:私の診療現場から」を読んで ペインクリニック 2016;37(11):1367-1373

  • 一般的に、慢性痛患者は医療者や家族が自身の苦痛を十分に理解していると感じ、さらに治療に納得できる説明がなされている場合は痛みに耐えることができる
  • 慢性痛患者の心理社会的要因 伊達久
    • 生育歴に問題がある場合
    • 労働災害患者や事故による被害者
    • 知的障害にある患者
    • 医療に対して怒りのある患者
  • 支持的カウンセリングでは、患者に問診する際に信頼関係の形成に留意すること、本人しかわからない苦痛を理解しようとする姿勢を示すこと、痛みを軽減するために力になりたいという気持ちを示すことが重要であるが、その時に「コンテンツ」として具体的な情報とともに、「交流のパターン」を把握する重要性を細井先生は説いている
  • 「なぜこの患者はこのような他者否定の考え方が身についたか」に興味をもって、生育歴を聞くと、患者自身が養育環境で人間としての尊重を受けられなかったことが多いとしている
  • 細井先生は最初から心理的につらい話を聞き出すことが難しい場合は、話しやすい趣味のことなどから聞き始めることをすすめている
  • 失感情症傾向 「心理的な葛藤を口にする」ということが「無駄なことではない」ということを認識させることが重要であるとしている
  • 失感情症の患者が長年抑圧してきた不快情動を治療者に話すと、「胸うちを洩らす」ことに慣れていために、自分の感情を吐露させた治療者に一時的に怒りが生まれることがあるという
  • 治療としては、「反芻」患者には、「痛みについて考えない」ように指導するのではなく、それを気づかせることが重要である
  • 細井先生は、慢性痛の心身医療の領域は「人が人を癒やす」ことが重要で、治療的対話の中で初めて理解される「人の苦痛」があり、その苦痛をしっかりと受け止めることで「救われる体験」が得られるとしている。これは、まさに「ケア」といえる
  • NBMとは、患者との対話を通して病気になった理由や経緯、また、患者が病気について現在どのように考えているかなど、患者の話す「物語」から、私たちは病気の背景や人間関係を理解して患者の抱えている問題に対して全人的にアプローチするものでる。その際に重要なのが、患者に共感し、受け入れ、思いやりの心をもって傾聴に努め、患者に気付きを与えることである