身体症状からの心理アセスメント

荒木登茂子、細井昌子 身体症状からの心理アセスメント 体から心へのメッセージをひきだすワーク 慢性疼痛 2014;33(1):53-59

  • 治療にあたっては、生育歴・生活歴を重視し、抑制・抑圧された感情に注目し、情動の表出を促し、体感の正常化を促す。そのためには治療関係の中で、患者が身体的痛みだけではなく、自身の苦痛・苦悩を適切に、かつ感情をともなって表現できるようになる事が必要である
  • しかし、患者は身体的痛みを訴え、心理社会的因子については無関心あるいは時間がない(失感情傾向)場合も多い。痛みという身体的訴えから、心理社会的因子を如何に読みとり、患者の痛みの物語をひもとくきっかけをつかむか、すなわち「身体症状からの心理アセスメント」が重要になる
  • 心身両義性とは、身体語を用いることで、心理的な体験を比喩として用いることができることである
  • 「からだを感じ取る」ためには、幼少期からの「からだの痛み」と「こころの声」をつなぐ時間をかけた「語りの場」が重要である。しかし、心身症の背景となる養育環境においては、両親の不和などによる緊張感が常在することで、成長の過程で、「自然な気持」を安心感ある場で語る中で「身につく」ことができる「体の不調から感じる心の状態」という認知過程にかかわる神経回路が未発達であると考えられる
  • したがって、心身医療の場で治療的に行う作業は、「からだから心を感じ取るための神経回路を活性化するワーク」であるともいえる
  • 慢性疼痛の心身医学的治療を行うためには、身体症状の背景にある心理社会的苦悩を読み取っていくことが重要である
  • 患者の身体症状は、防衛(自分を守る鎧)の意味を持っている場合もあり、からだの声を聴き、症状をコントロールする働きかけには戸惑いや抵抗を伴うこともある。患者お硬い防衛を緩めるには、症状から聴こえる「こころの叫び」に患者も治療者も共に耳を澄まし、受容・共感することが功を奏する