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生き方習慣病としての慢性痛:久山町研究、心療内科臨床から慢性痛難治化のスリーヒット理論まで

細井昌子、柴田舞欧、安野広三、岩城理恵、早木千絵、西原千絵、須藤信行 生き方習慣病としての慢性痛:久山町研究、心療内科臨床から慢性痛難治化のスリーヒット理論まで 医薬品レギュラトリーサイエンス 2015;46(10):674-680

  • 患者自身が意識している心身の訴えや心理社会的因子を傾聴し、安心できる治療関係構築を行っていくと患者自身がこれまで意識していなかった率直な思い(本音)が意識化できるようになり、これまでの生き方やこれから進もうとしている生き方が「自分が真に望んでいるものかどうか」が問われることになる
  • 一般的な慢性痛は「生活習慣病」でもあるが、難治例・遷延例の慢性痛は「生き方習慣病」であるという認識が生まれてきた
  • 久山町研究 感情への気付きの欠如(アレキシサイミア)や、16歳までの両親の養育スタイル(被養育体験)と慢性痛の有症率が有意に相関
  • 感情への気づきを大切にした過干渉にならない養育スタイルが「慢性痛」予防の対策として重要であるという視点を換起したい
  • 痛みは主観的で不快な感覚・情動体験であり、それゆえに不快な痛み体験に、慢性化に伴い嫌悪感・社会的疎外感・自己否定感などの様々な不快情動が合併することにより、身体的な要因で発症した痛みがより苦しいものに発展していくことがある
  • 九州大学病院心療内科における慢性痛の臨床

—まずは複数の医療機関を経ても満足を得られない状態である苦痛・苦悩の状態であることの遺憾の意を示しながらも、焦らないで患者ー医師の安定した信頼関係を形成していく中で、今まで気づかなかった慢性痛に対するセルフマネジメント法が発見可能であることをお伝えしている。過去の医療スタッフとのやりとりでの苦労は傾聴し、同様のトラブルが起こりにくいように、安定した治療関係の形成を目標にすることもあらかじめ話しあうようにしている

  • 「言わなくてもわかってもらえる調和の文化」が特徴の日本における美徳として、愚痴をいわない心性があげられる。「顔で笑って、心で泣いて」「言わぬが花」」といった表現に現れるように、「言わないで努力するが、実は察して欲しい」という心性がある。しかし、様々な場面で本音を言わないうちに抑圧した不快感情は意識下に蓄積され、蓄積した不快情動はいつのまにか浮き上がることが少なくなり、自分自身でさえ、自分が何を欲しているかがわからなくなっていく
  • 長く自身の気持ちを語る場がないと、このような感情同定困難がおこることになる
  • アレキシサイミアの3つの因子である感情同定困難、感情伝達困難、外的志向のうち、特に感情同定困難が慢性痛の有症率に影響していることもわかり、感情を同定する能力を高めることが、一般住民でも、慢性痛の予防として有用である可能性がある
  • これまでは、慢性痛に対しては、低下している副交感神経系を活性化するために、一旦休憩してリラックス法を学ぶことが近道であることを理解するのに、多くの時間を要することが多い
  • 九大病院心療内科の臨床で、生育歴を詳細に聴取していくと、両親の口論、離婚問題や家庭内暴力など安心できない生活環境において幼少期から自身の気持ちを率直に話す場をもらえずに、しかも親の思いだけをおしつけられる過干渉の養育スタイルが多くの慢性痛難治例で観察されている。
  • 自分の感情や考え方(認知)がわかると段階になると、認知行動療法などが有効に作用すると考えられるが、自分の感情がわからない段階では、マインドフルネスを基礎としたアプローチや箱庭療法などが有用である
  • 「生き方習慣」 愛着形成の時点で自分の心身のストレスを養育者に大切に扱ってもらえなかった場合には自己否定感が強くなり、生活環境における問題点に対して過剰適応的行動でかいけつを図ろうとする対処法が浮かび上がる。
  • 過剰適応行動には、「段取り」を常に考えている過剰脳活動が必要となり、さらに実際の過活動で運動器を過剰使用することになる
  • 多くは、掃除・洗濯・食事の準備など、日常繰り返される行動に反映され、これらの行動は強迫的な認知・行動になって定着化し、一般的には「性格」として観察される場合もある
  • 本来の自己否定感を、環境への献身で補おうとするために、運動器や消化器の痛みが生じても自分の心身ストレス緩和を中心とした考え方ができずに、周囲の欲求不満状況や自身の強迫的認知あるいは情緒的発散を優先して行動してしまう(身体的に疲労しているのに休日に旅行などで動きまわってしまうなど)ことになり、心身のストレスにたいする適応的なセルフコントロールが困難になる
  • その結果として、交感神経系過緊張の状態が持続し、免疫系にも異常をきたし、グリア細胞などの神経免疫系や脳機能にも変容が起こる可能性があり、末梢の運動器の異常だけでは説明がつきにくい慢性痛が発症すると考えられる
  • ここで注意すべきは「昭和型生き方習慣」も「平成型生き方習慣」も妥当なレベルであれば、望ましい行動として推奨される部分もあることである。しかし、「自分の体調や感情を傷つけてまで」過剰に行う必要や必然性がないのに、孤独感や自己否定感に直面することへの恐れが強くなり、これらの不快情動を回避するための「平成型生き方習慣」が止められず、バランスが悪くなっている