50歳台女性の慢性痛3症例の治療経験:”タラレバ”で感じるペインクリ

田邊豊 50歳台女性の慢性痛3症例の治療経験:"タラレバ”で感じるペインクリニシャンの関わり方 ペインクリニック 2015;36(9):1259-1265

  • 問診 「他につらいことはないですか?」
  • 今回、何が不安となっているかを、訴えに共感・傾聴しながら整理していていくことが大切と考えました
  • 身体診察や検査所見から、”重大な疾患は存在せず改善する”と説得し、患者の症状について教育し、さらに時間とともに良くなることを告げることから始め、今後も診察は継続し、”見捨てない姿勢”を提示し保証するアプローチを行う
  • 問診 何か生活環境などにに変化があったか尋ねた
  • 心理葛藤を痛みで表現している可能性が示唆された
  • 臨床心理士との面接を通して、解決できることをできないことを整理していくことを説明した
  • 常々、心理的サポートが必要と思われる慢性痛の診察において、”症状に共感はしても同情はしてはいけない”と考えております
  • 精神疾患の家族に囲まれ、誰にも相談できる環境になかった患者がその心理的葛藤を身体化している症例です。
  • 安心が得られないという交感神経優位の状態に、社会的疎外感という社会的疎外感という社会的痛み(脳画像研究では背外側前部帯状回や島前部などの痛みの不快情動に関与する脳領域が活性化することが知られています)が合併していたことも推定されるわけです。
  • 外陰部痛では心身医学的治療を始めてだいぶ経ってから、幼少期や思春期に性的いたずらを受けていたことがある経験を話される時があります。
  • こういったトラウマの背景が疑われても、安定した治療関係の中で初めて話すことができるため、焦って聞き出す必要はなく、可能性の一つとして留意していくことが重要です
  • 現代の50代は、戦中戦後から戦後に生まれた両親に養育されており、努力、根性、忍耐、を幼少期から美徳として教えられてきたこともあり、のんびりしていことへの罪悪感を覚えがちです。こういった症例に対応する治療者自身も過活動の心性を持っっていることが多く、副交感神経の活性化が末梢循環を改善するという対策が、患者治療者とも意識に上がることが少ないのかもしれません