心療内科における腰痛症の治療 2

  • カウンセリングが進む過程で、疼痛の維持・増悪の背後にある以前から抱えていた患者の人生の問題や家族との葛藤を本人が気づくようになると、それらの方が疼痛により大きな苦痛・苦悩であることが分かり、その解決にむけ取り組み始めるケースもある
  • ペーシング指導
    • 強迫的な過活動を行っている患者には「ペーシング(一回に少しづつ作業をすること)「を用いると良い
    • 患者は作業のペース配分が苦手なため、作業の量ではなく、「時間に基づくペース配分」に変える。
    • 患者は休むことに罪悪感を持つ場合があるが、その感情を認めつつ休むのも作業のうちと考え、休んでいる自分に絶えるように促す。また、うまくペーシングが行えているとき痛みがどうなっているかを聴取し、効果を実感してもらう
  • ソクラテス式対話法
    • 治療者が質問することで患者の気づきを促すような面接技法
    • 「その考え方(自動思考)は100%正しいですか?」
    • 「10年後だったら(元気な時だったら)どう考えるでしょう」
    • 「もし他の人が同じ考え方をしていたらあなたはどうアドバイスしますか?」
  • ACT acceptance and commitment therapy
    • 問題の状況に対し適応的に対処しようとしたとき、強固な非適応的な信念や思考、それによって引き起こされる罪悪感、劣等感、羞恥心、恐れなどのネガティブな感情などが傷害となる
    • 「自分は価値のない人間だ」という強固な信念をもっている人の場合、休養することに対しては「人の役に立っていないことは存在意義を失うことだ」という思考を持ちやすく、強い罪悪感や無価値観を覚えてしまう
    • この辛い感情から逃れるために、とにかく休まずに人の役に立つような作業を続けてしまう。
    • 療養が必要な腰痛患者がこのようなパターンになった場合、適切な休養をとることがでいないために疼痛が増悪していく。
  • このような反応の仕方を変えるためには、自分の思考や感情、行動のプロセスに意識的に気づき、非適応的な信念や思考を距離を置きつつ、適応的な行動を起こす時に感じる辛い感情を避けずに抱えられるようになる必要がある。そこで有効と思われるのがACT
    • マインドフルネスとは、「今この瞬間に、評価をしないで、意識を集中すること」である
    • 「思考、感情、感覚へ意図的に気づく能力」「思考を現実と区別し距離をとり客観的に観察する能力」「辛い感情や疼痛などの感覚もあるがままに体験する能力」などが発展し、とらわれの現象、感情的苦痛や疼痛に対する耐性向上、適応的行動の増加につながる
    • ACTにおいてはさらに、人生においてなにが大切に考えるかという「価値の明確化」を行うことで、毎日の生活を痛みにとらわれるのではなく、自分にとってもっと有意義に活動に集中していけるようにしていく
  • 疼痛行動への対応
    • 家族に対しこのメカニズムを説明し、痛みがあるときだけ優しくするのではなく、いつも同じように(ときには、痛みがない時にほど時間をとって)対応し根底にある患者のさみしさに配慮するように家族印アドバイスすることが有効である
    • 疼痛行動は学習によって患者の無意識に刻み込まれており、患者は自身の疼痛行動と報酬に気づいていないことに注意が必要である
    • 難治例では患者の疼痛行動で逆に救われている苦境が背景にある場合がある
    • 治療者は患者の疼痛行動が不要となるように背後の問題に患者と共に取り組み、治っても心理的に苦しまないでよい環境を作ることが重要である