柴田舞欧、細井昌子 心療内科における腰痛症の治療 臨床と研究 2014:91(11):1431-1438
- 精神分析理論
- さまざまな感情や苦悩を無意識下に抑圧することで身体化(身体症状として現れる)するという観点から、抑圧された感情や苦悩を患者自らの言葉で語ってもらう(言語化する)ことで症状の訴えを軽減させるという考え方
- 認知行動療法
- 相手に過度に合わせる過剰適応タイプの慢性疼痛患者は周囲の人に対し無理して笑顔を作ったり過度に動いたりして、周囲から「元気そう。どこが病気なの?(仮病?、気のせい?)」という評価を受けることが多く、周囲に苦悩をわかってもらえないという不満を持っていることが多い
- 支持的カウンセリング
- 傾聴は、うなずきながら患者のいう言葉をそのままに、「◯◯と思ったんですね」とオウム返しし、自然な会話を促す。
- 言葉を返す時に注意すべき点は、なるべく良い悪いなどの価値判断はせず、感情表現に焦点をあて、「そんな場合はそのようにかんじますよね」と認証する。これは、こんな風に感じてはいけないと感情を抑えこむことで非適応認知や行動が起きている場合に治療的であり、これだけで自己評価が上がり病態がよくなる場合もある
- 慢性疼痛治療の目的 米国麻酔学会 慢性疼痛治療のガイドライン
- 治療目標をこのように「身体的痛みの緩和」中心の考え方から、「生き生きとした生活・人生を取り戻す」ことにシフトすることにある。
- 治療者自身が治療目標の視野を広げ、治療の動機付けとして「痛み以外の大事なものを思い出させる」ことを明確化し、患者の主体的な姿勢を回復させ、患者が自己肯定感や自己効力感を得られように援助する
- 慢性疼痛患者の心理特性
- 低い自己肯定感・過剰適応傾向
- 強迫性・完璧主義
- 患者に聞くと自己評価が低いため、「たいしてしてませんよ」「いい加減ですよ」などというが、手順やかかった時間を具体的に聴くと完璧・頻回・長時間の作業を行っている場合がしばしばある
- アレキシサイミア(失感情症)傾向
- 慢性疼痛に関連する病態 認知(思考)、感情(情動)、行動、身体状況・環境の4つの因子が総合作用していることを念頭に聞き取りを行う
- 心理教育
- 疼痛は単に感覚だけでなく不快な情動との複合体験であること、現在の医学的検査で捉えきれない神経系などの分子レベルの変化や筋骨格系や内分泌・自律神経系を含めた機能的変化が疼痛に関与しうること、疼痛は下行性調節系や中枢レベルでの修飾を受けていること、抑うつや不安、怒りなど感情状態やストレスも身体的痛みに関係することなど、科学的な知見を踏まえて適宜伝える
- 「痛みのほとんどは何らかの身体的問題がベースにあり、心因だけの痛みは基本的にないと考えている」ことを強調しながらも、「今の状況では薬や処置だけでは不十分であり、より広い観点で治療に取り組んでいく必要がある」という方向性を話し合う