丸田俊彦 疼痛性障害への精神分析アプローチ 精神科治療学 2009;24(10):200-201

  • 伝統的精神分析理論の前提
    • 慢性疼痛の患者には、”見捨てられる”、”置き去りにされる”という依存体験からくる怒りと攻撃性、そして、そうしたネガティブな気持ちを持つことに対する罪悪感がある
    • 慢性疼痛は、そうした怒りと攻撃性に対する処罰、すなわち罪の贖いとして理解できる
    • そうした患者は、ことがうまく進んだり、人生において成功することに耐えられない
    • そうした患者は、自分にとって大切な相手・地位・立場を失うか、失いかけた時に、痛みを起こしやすい
    • そうした患者の慢性疼痛を治療するなら、葛藤の基本にある依存性・怒り・攻撃性・罪悪感を(精神療法的に)治療する必要がある
  • 精神力動的システム理論(間主観的アプローチ)の前提
    • 痛み知覚をどう体験し、その体験をどう表現するかは、周囲の環境との相互作用で決まる
    • ソーシャルリファレンシングは、そうした主観的体験が、社会的・社交的な表出へと変形される一例である
    • 疼痛行動の意味は、その行動が表出される間主観的コンテクストを離れては理解できない
    • 痛みの治療にあたる臨床医は、疼痛行動の生成・保持・変遷において、重要な役割を果たしている
    • 疼痛行動の意味が理解でき、その減少が可能となるのは、”その現象が(心的)再外傷を招くことはない”と、患者が確信できる時である