細井昌子:第 4 章 心身症各論 疼痛性障害.最新医学別冊・新しい診断と治療のABC 78:127−134, 2013

  • 痛みが、「潜在的な障害に結びつくか、このような障害を表す言葉を使って述べられる」という主観的な体験であると定義されていることから、人が痛いと言葉で表現するもに対して、「本当の痛みではない」と他者が否定することは理論的に成立しないことにもなる
  • 神経伝導路 痛覚系は認知情動自律神経系と密接に情報連携を行っている
  • 生育環境の中で、自身の自然な気持ちを周囲に受け止められずに過剰適応を強いられてきた症例では、社会的疎外への強い恐怖があり、孤立を避けるために身体的苦痛を甘んじて受け入れるような行動をとるようである
  • 疼痛性障害の多面的診断 7軸
    • 医学生物学的な医学生物学的な器質的および機能的病態
    • 不安、抑うつなどの情動の変化
    • 失感情症(自分の気持ちを表現出来にくい傾向)、パーソナリティ特性、パーソナリティ障害、あるいは発達障害レベルの病態
    • 痛みに対する認知と対処法
    • 行動医学的な疼痛行動の分析
    • 家族や社会のシステムで役割機能障害
    • 身体的・精神的障害による生活障害
  • 疼痛性障害の治療目標は痛みの完全な除去ではなく、1痛みに対する耐性を高め、2痛みのある生活を受容しその自己コントロール感を獲得し、3日常生活の行動範囲を広げ、4社会生活への適応を改善していくこと
  • つまり、痛みの存在に圧倒された日常生活感から脱出し、痛みと付き合いながら、痛みにとらわれることなく自己実現を目標とした充実した人生を楽しめるように、全人的に医学サポートを行うことにある
  • 心因性疼痛という呼び方は患者に、「自分で痛みを引き起こしている」、「本人が勝手に痛がっている」と感じさせることが多く、患者ー治療者で共有する病名としてはふさわしくないと感じており、”社会的痛み”として理解するほうが発展性がある
  • 疼痛性障害や持続性身体表現性障害でも、脳内の現象として身体的痛みと同様な脳活性が起こっているエビデンスが今後も患者例で同定される中で、主観的な苦痛・苦悩体験の増大が起こっている病態が、現代医療の中で、”社会的苦痛を合併した身体症状”として市民権を得ていくことが望まれる