松平浩 現代社会と腰痛 ストレスと非特異的腰痛の関係 理学療法magazine 2014;1(1):23-30

  • 非特異的(腰痛)たる所以として、通常の画像検査が基本的に痛みの原因を語らず、汚予測にもならないことが挙げられます。
  • 病因の正確な把握は難しいものの、腰痛、とくに慢性腰痛は「生物・心理・社会的疼痛症候群」であるという認識に変換されました。
  • 画像所見を重視した形態学的異常から、目に見えない機能的異常を取り入れた概念へえと捉え方を変換した方が望ましいと考えており、具体的には「現状では原因不明とされてしまう非特異的腰痛の多くが、脊椎の主とする運動器と脳、両者のdysfunctionが共存した状態」という捉え方を提案しています。
  • 脊椎、脳のdysfunctionはしばしば共存し、その割合は同じ人でも曝露される環境因子に依存するという理論で腰痛を捉えるようにすると、よくわからない非特異的腰痛の顔を見えやすくする、言い換えれば対策を講じやすくなる感触を得ています
  • ネガティブな情動により海馬、扁桃体の活動が高まると、ドパミンおよびオピオイドが分泌されにくくなると考えられます。「下行性痛覚抑制系」も正常に働きにくくなり、脊髄後角の侵害情報が抑制されなくなると、さらに痛みが強まり痛覚過敏の状態に陥りやすくなりえます。加えてドパミンの分泌低下は、最高次の精神活動を担っている前頭前皮質の機能低下もさらに強まる。抑うつにもなり、身体化徴候も現れる可能性がある。加えて前頭前皮質線条体の一部の関与する目的志向行動が起こりにくくなる
  • 身体化徴候とはストレスに伴う自律神経失調様の機能的な症状であり、専門科で器質的な原因が明らかにされない、頭痛、めまい、耳鳴り、息苦しさ、動機、下痢、便秘、吐き気を含む胃腸の不調といった臓器系の症状に加え、肩こりや手足のしびれや筋肉の痛み、腰痛、背中の張りといった運動器系の症状も含みます
  • 身体化徴候がさらにストレスとなって痛みを抑制できなくなり、全身的な体調不良や痛みを引き起こすという悪循環に陥ることもありえます。心理社会的要因の強い腰痛では、さまざまな身体化徴候を併せ持つケースが多くなります。反応性のうつ状態睡眠障害心理的ストレスが引き金となるくことは、いうまでもなく脳dysfunctionが原因となる身体化徴候としての腰痛の患者は、必然的に抑うつのひとも多くなるでしょう
  • 痛みの主因が腰(局所)にあるわけではないので、整形外科で行われる治療が奏功するはずはなく、認知行動療法や環境調整といった心理社会的な側面にアプローチする治療が必要になってきます。
  • おわりに
    • とりあえずコルセットといったステレオタイプの腰痛対策は、見直す時期に来ていると考えます。職場で安全対策医院をされている方は、メンタルヘルス対策は腰痛予防対策にもつながるという認識を今日からもっていただけると幸いです