腰痛は単なる痛みの問題ではない 寿命、がんなどとの関係

紺野愼一 腰痛は単なる痛みの問題ではない 寿命、がんなどとの関係 理学療法 magazine 2014;1(1):11-15

  • 欧米の臨床疫学研究 腰痛の社会的背景 文化、社会階級(地位)、教育、仕事の満足度と社会心理的側面、雇用管理と労働関係、失業、早期引退、労災補償、訴訟などが挙げられる
  • うつ、不安、落胆などの情緒因子は、腰痛と深く関連
  • 痛みの自己管理能力は慢性腰痛に関連
  • 労働と腰痛 長時間の振動、頻回の屈曲ねじり動作、重量物挙上、仕事に関する低い満足度、ストレス、過度の要求、同僚や上司との関係不良などの因子が腰痛と関連
  • ストレスは日本人の腰痛を引き起こす危険因子の一つ
    • 腰椎椎間板ヘルニアで手術を受けるほどの症状が強い患者では、仕事による精神的ストレスが高く、仕事に対する満足度が低いことが判明している。抑うつや不安を訴えることが、手術をうける患者に多いことも事実。このように、腰痛の病態には、患者の社会的背景や心理状態が深く関与している。
  • 腰痛は従来、”脊椎の障害”として捉えられ、画像検査を代表とする”形態学的異常”の探索が腰痛の病態把握に重要な役割を果たしてきました。これに対し、近年、”生物心理社会的疼痛症候群”という概念で捉えようという動きがあります。すなわち、”形態・機能障害”として腰痛を捉え直そうという考え方です。目に見える異常と同時に、目に見えない機能障害という視点からも腰痛の病態を把握する必要があるといえます。
  • 腰痛の治療にあたっては、痛みの軽減を目的とした従来の治療法の視点だけではなく、患者にとって腰痛により生活上どのような障害があるかという、”疼痛の意味”に焦点を当てた医療システムの構築も重要だといえます。
  • このような概念のもとでは、鎮痛は目的ではなく、手段となります。