中村敬 心身症とその周辺領域への森田療法 心身医 2014;54(4):317-323
- 森田療法は、精神科医、森田正馬によって1919年に創始された神経症に対する独自の精神療法
- そもそも不安とその根源にある死の恐怖は人間にとって避けがたく普遍的な感情であり、その裏には生きようとする人間の本来の欲望(生の欲望)が存在する。神経症の患者は、自己の不安を排除することに日々努力を傾けており、そのためかえって不安が自己増殖していくという悪循環に陥っている
- このような心理的悪循環はとらわれの機制と呼ばれる
- こうしたとらわれから脱却するには、不安も生の欲望もどちらも自然な人間性として受容することが不可欠であり、それを森田療法で、「あるがまま」という言葉でいいあらわしてきた
- あるがままとは、第一に不安や症状を排除しようとするはからいをやめ、そのままにしておく態度を養うことである。第二には、不安の裏にある生の欲望(向上発展の希求)を建設的な行動に発揮していくことである。そのような実践によって自己を現実に生かしていくことが可能になるのである
- 5つの基本要素 感情の自覚と需要を促す、生の欲望を発見し賦活する、悪循環を明確にする、建設的な行動を指導する、行動や生活のパターンを見直す
- ICD-10 身体表現性障害 所見は陰性が続き症状にはいかなる身体的基盤をもたないという医師の保証にかかわらず、医学的な検索を執拗に要求するとともに繰り返し身体症状を訴えるものである。おもな類型に、心気障害、身体化障害、身体表現性自律神経機能不全、持続性身体表現性疼痛障害
- 森田療法では身体表現しえ障害を「とらわれの病理」として理解する
- 器質的要因の関与を全面否定せず、注意と感覚の悪循環は「増悪因子」として控えめな説明にとどめた方が治療中断のリスクは少ない
- 「患者の訴えは当たり前のものだが、普通の人はなれて鈍感になっている」と説明(症状の普遍化) 注意と感覚の悪循環から症状にとらわれていることを示す。旺盛な心のエネルギーを建設的な方向に発揮することを、症状はそのままに日常のちょっとしたやるべきことからやっていくように助言した
- 森田療法の治療の要点