整形外科医のための感染症診療のピットフォール

岩田健太郎 整形外科医のための感染症診療のピットフォール 日整会誌 2013;87(12):1168-1175

  • 耐性菌がほとんど存在しないオランダのような国もあり、耐性菌対策により薬剤耐性菌を劇的に減らすことに成功した英国、フィンランドのような国も存在する
  • 抗菌剤使用には4つのリスクが存在する。副作用発生のリスク、薬剤耐性菌発生のリスク、金銭的リスク、そしてロジスティックスのリスクである
  • 結論から申し上げあれば、99.9%の経口第3世代セフェムは誤用されている
  • 現在は第5世代セファロスポリンも存在する
  • セフカペン・ピボキシル、セフジトレン・ピボキシルで、両者は経口セファロスポリンの売上の世界の一位と二位を占めている。セフカペン・ピボキシルのマーケットはほとんど日本で占められている。セフカペン・ピボキシルは極めてガラパゴス的な抗菌薬なのである
  • 丹毒や蜂窩織炎といった皮膚軟部組織感染症(skin and soft tissue infection ; SSTI)
  • 経口第3世代セフェム
    • bioavailabilityの面で、重症SSTI,化膿性関節炎、急性骨髄炎、壊死性筋膜炎などの整形外科系感染症においても経口第3世代セフェムが用いられてはならない
    • 消化管からの吸収(bioavailability)が悪いため、さらに体内に入る抗菌薬は少なくなる
    • 吸収されない抗菌薬は感染部位には到達できず、感染部位に到達できない抗菌薬は効果がない
  • 日本では昔から、「使った、治った、だから効いた」といういわるゆ「サンタ論法」が用いられてきた。しかし、これは典型的な前後関係と因果関係の取り違えである
  • 「そこに菌がいる」と「それが病気の原因である」は同義ではない。細菌という「もの」と疾患という「こと」の混在も、日本の診療現場でよく観察する誤謬である。
  • 現在は第3世代のセフェム、そしてニューキノロン製剤が、C. difficile感染(CDI)の最大のリスクである
  • 第3世代セファロスポリン 注射剤として用いる限りにおいて有用
  • マクロライド 心血管系リススクに留意
  • 薬剤耐性菌 肺炎球菌に対してカルバペネム系でなく古典的なペニシリン系を
  • 抗菌剤においても、「新しい」イコール「良い」とは限らない
  • そもそも、新しい薬は「安全性」という観点からはほとんど良いデータを持っていない
  • むしろ、古い抗菌薬ほど副作用という観点からはベターである。なぜなら、何十年という使用実績があるために、今後「思いもしなかった新しい副作用」がみつからう可能性がきわめて小さいからである
  • もちろん古い薬にも副作用はある。・しかし、その副作用が十全に医者に理解されている限り、情報は充分に患者に提供できるし、対応策もとれる。それが困難なのが新薬なのである。