思春期の精神科面接ライブ-こころの診察室から‐

  • 精神科面接の教科書には、「傾聴」、「支持」、「共感」が精神療法の基本として無造作に並べ立ててあるのですが、それらを診察の状況においてみると、必須とされるものが時として有害であることに気付かされます。実際、何も考えないで教科書のとおりに、「傾聴」して、「支持」して、「共感」すると、しばしば患者は見事なまでに悪化します。延々と自虐的なトラウマ話に終始して、語らせれば語らせるほど患者さんは不穏になっていってしまうのです。
  • 哲学や倫理や国際関係といった抽象度の高い知識というものは、一方的に講義されるものではなく、語り合いのなかで出てくるものだということを示唆しているように思われます。
  • 精神科臨床は話し合いによる治療。ただ、話し合いの中に、私ども精神科医はそれを通じて、患者さんの自尊心を高めようとか、現状についての冷静な見方へと導こうといった工夫をしています。
  • 私は、今日、「傾聴」ということは過大評価されているように思います。患者さんの話をひたすら我慢比べのように聴き続けても、それで本当に患者さんが自分自身を見つめなおすのでしょうか
  • 私は、思慮を欠いた傾聴はプロの仕事ではないと思います。
  • 聴くためには良い質問をしなくてはなりません。
  • 私ども精神科医も黒柳さんと同様に対話のプロのはずです。対話は、尋ねることと聴くことからなる。だから、黒柳さんと同じように、尋ね方、問い方にもうまくなって行きたいものです。患者さんにとってボジティブなことを語らせるためには、良い質問をして、患者さんが自分自身と自分をとりまく状況について理解を深めるような方向付けをしたいのです。
  • すなわち、話を聴くということは、明確な治療的目的をもってするならいいと思います。何も考えないで、ただ話を聞けばそれで治療になるという考えは、浅はかだと思います。
  • 医者だって、できることとできないことがあります。それは率直にいっていいのではないでしょうか
  • 患者さん側の期待と、こちらにできることのすりあわせの作業を繰り返し、同時になんらかなアクションプランを探す、これが思春期臨床のかなりの部分を占めるようになります。
  • 精神科医の側から見れば、精神科面接の最も重要なポイントは、流れを作ることだと思います。
  • 私どは、つねに面接の流れをどちらの方向に向けていくかには、関心を払っています。精神科医の仕事のなかで最も精魂を傾けるのが、この流れを作ることだと思います。流れを作ることは精神科医の仕事の真髄といってもいいくらいです。
  • 不注意にも患者さんの触れてはならない点に触れてしまい、地雷を踏んだかのように突然の激昂をかって、ただひたすら罵声に耐えなければならないこともあります。
  • 患者さんからみれば、面接中、主治医は、自分の話を聴いてくれているようにみえます。それはうそではないのですが、聴きながら、実は、もう一つの意識で、面接の流れを考えています。
  • 良い面接は知的におもしろい。