疼痛性障害における病名告知と説

堀川直史 疼痛性障害における病名告知と説明 精神科治療学 2004;19(2):169-174

  • 疼痛性障害の情報提供と治療関係への配慮
    • 治療のためには、病名、病態、治療、経過の説明とその後の十分な話し合いが必須
    • 患者が精神科治療について疑問や不安を持ち、自尊感情の傷つきを感じている場合もあるため、これらへの配慮が必要
    • 症状に関する認知や行動の変化を求めることが治療の重要な構成要素であり、そのために説明と話し合いが必要
    • 明確な治療契約を結ぶことがとりわけ重要であり、そのためにも説明と話し合いが必要
  • 基本となることは、疼痛性障害の治療では、病名、病態、治療方法、経過の予測などの説明およびその後の十分な話し合いが必須であり、これなしにには治療が始まらないということである
  • 説明 症状をすぐに治すことは困難で、症状がしばらく続くという前提で生活を組み立てなくてはならないこと、これは希望をすてることではなく、疼痛はあってもできるだけ充実した生活を送ろうというポジティブな変化であることなどを何らかの形で患者に伝え、話し合うことになる
  • 治療には時間がかかり、治療経過中に何回も同じ質問を受け、そのつどさまざまな説明を繰り返さなければならない。これもこの疾患の特徴であろう
  • 「症状が強くてとてもつらそうですね。ストレスや緊張などで痛みが強まることはよくあります。もしそうならば、精神科の治療で症状を軽くすることができるので、まず診察をしてみましょう」と話す
  • 重要なことは、症状のみだけでなく、症状による苦痛、それに伴う心細さや不安、さらに症状によってどのように生活が妨げられているかなどを聞くことである
  • 「つらいでしょうね。あなたのつらさはよくわかります」などと述べたとしても、患者は共感的な発言とは感じないであろう
  • 疼痛性障害と診断したら、はっきりと病名を伝える。さらに、「この病気はとても辛い病気です。診断がつかなかったり、つらさが他人には通じないこともあります。そういう点でもつらい病気だと思います。しかし、時間が必要ですが、症状は次第に改善していきます」などと付け加える
  • 「一度症状がおこるとどうしてもそのことが心配になります。その心配がストレスになって症状がさらに強まるという悪循環が起こっているかも知れません」という説明を付け加えることも多い
  • 抗うつ薬には抗うつ作用のほかに鎮痛作用があり、重要な鎮痛補助薬です」「抗うつ薬を処方しますが、うつ病と診断しているわけではありません。」
  • 治療開始後、患者が治らないといっても、すぐには処方を変更しない。
  • 「すぐにはよくなりませんが、症状はだんだんに軽くなります」などの説明を繰り返すことになる
  • 「つらいでしょうが、日常生活の制限はありません。つらいので運動が縁、体力が落ちることがあります。無理はしなくてよいですが、すこしづつ散歩するなど、体力が落ちないように工夫をしましょう」程度の言い方が受け入れられやすい
  • 治療は予約制として、予約外の診察は行わないことが原則である
  • 「つらい病気で、治るには時間がかかりますが、協力して治療すればだんだんに治っていきます」
  • 心気症状には二面性があり、症状は不安の防衛機制として作用しているが、症状がまったくよくならないことも患者に苦痛を与え、不安を強める
  • 医療者はまずこのような陰性感情を意識化し、対象化しなければならない。また、以上に述べてきたなかで、とくに治療構造の明確化、症状を早くとろうと焦らないことなどは、医療者に過剰な陰性感情が起きることを予防するためにも重要な意味をもっている