慢性疼痛の認知行動療法

吉野敦雄、岡本泰昌、堀越勝、神人蘭、林優美、松永美希、山脇成人 慢性疼痛の認知行動療法 認知療法研究 2012;5(2):147-155

  • 慢性疼痛患者は周りから理解されず、孤立することが多いため、同じ状況に置かれている他のメンバーに状況や気持ちを伝えることによって互いに共感を生み、それがサポート体制を形作ることになる
  • 慢性疼痛に対するCBTは、疼痛に対して新しい認知的、行動的反応を学習したり、ストレスのような疼痛に影響を与える要因を改善したり、疼痛をコントロールできるという自己効力感を増やすことによって、疼痛そのものや、生活、気分を改善するとしている Loeser 2001
  • 慢性疼痛に特徴的な認知・行動的メカニズム
    • 認知的メカニズムにおいてより関連があるのは、パーソナリティ・社会的役割・中核信念である。パーソナリティは神経質、否定的思考、ストレス脆弱性など、社会的役割は性別、。文化など、中核信念は疼痛と深く関連づける思考(わたしの痛みは決してよくならないなど)、疼痛に関して幼少期から根付いた表現方法など、といわれている
  • 疼痛に対して即座に判断する認知(一時的評価)の特徴
    • 疼痛によって何もかも失ってしまったという損失的思考、疼痛は太刀打ちできない非常におそろしいものであるという脅威的思考、疼痛は対処できないものである挑戦的思考がある
  • 疼痛における信念、自動思考(二次的評価)
    • 疼痛が悪化する一方ではないかという破局的思考、他の精神疾患と同様の自己・他者に対する否定的思考、自分で治すことができないという自己効力感の低下
    • 特に破局的思考は、抑うつ、疼痛への恐怖・不安、社会機能低下など様々な症状に影響を与えているといわれている
  • これらの思考を、「痛みがあってもすこしづつできることがある」「痛みはある程度自分でコントロールできるものである」「痛みがあってもうまく付き合っていくことができる」「以前よりよくなっている」などと修正することによって、疼痛、気分、生活を改善することが目標となる
  • 治療目標は、疼痛自体の改善のみならず、抑うつなどの気分の改善、生活機能改善も含まれることが多い。また人によって様々だが、医療機関への受診を減らし疼痛を自分で管理するようにすること、鎮痛薬の減少、なども目標になることがある。慢性疼痛の理想的な治療成功例とは、疼痛はある程度みられても、日々の生活において過度な精神的ストレスがなく、生産的な満足の行く活動に従事し、医療機関も定期的に受診できる状態になることである