松原貴子 痛みに対する包括的アプローチ OTジャーナル 2013;4(1):17-21

  • 痛みには、「感覚」、「情動」、「認知」の3側面がある
  • 症状を有する患者の情動や認知、患者を取り巻く社会的情勢までも”一人の個(whole body)”として包括的に捉えアプローチしようとする「生物心理社会的モデル(biopsychosocial model)」を重視しようとする医療におけるパラダイムシフトが起こっている
  • 学際的痛み治療の考え方は、Wilbert E Fordyceによって提唱されたオペラント条件付け認知行動理論にもとづくもので、治療対象を「痛み」から「痛み行動」(痛みの訴え、苦渋の表情・姿勢、服薬、過剰受療行動、対人関係の悪化・破綻、休職、訴訟等の社会的行動)に転換し、痛み行動の”消去”およびADLや運動等、適応行動の”強化”に焦点化されている。そのためには、治療が依存的または受身的なものにならないように注意し、治療への能動的な参加を促し、自己決定にもとづき治療を進めることが必要となる、診療上の特徴としては、1リハを重視することのほかに、2心理的因子の評価・治療を行う、3患者のみならず家族へのアプローチ(教育を含む)を行う、4症状に左右されず定量化された治療を行うこと等が挙げられる
  • 「身体を鍛える」というよりも、「痛みの捉え方を是正し)(認知修正)再学習する」ことを十分に患者に理解させたうえで運動を実践しなければ奏効しづらい