笠原諭 慢性疼痛における心理社会的要因と脳dysfunctionへのアプローチ2013;34(1):37-46

  • 神経症は、心因と性格要因の相互作用によって生じるものと言い換えることができる。したがって、慢性疼痛患者には、心因性疼痛など「神経症」に該当するものが多く見られるが、その精神面での評価では「心因」と「性格要因(人格)」の双方を評価する必要がある。
  • 心因が除去され、その結果として痛みが消失した時、結果的にそれが心因だったとわかることも多く、当初から簡単に同定できるものではない
  • 慢性疼痛の背後に隠された心因を含む精神面の問題をテストバッテリーで評価することは”畑に埋まった芋をみつける”ことにたとえるとイメージしやすい
    • BS-POP 芋は眼の前の畑にうまっているかどうかを判定
    • MMPI 芋は畑の中のどの領域にうまっているかを判定
    • P-F スタディ 芋がどのほどの深さに埋まっているか判定
    • 文章完成法テスト 埋まっている芋が、どんな種類の芋かがわかる
  • 認知行動療法では、個人の体験を、「認知」、「気分・感情」、「行動」、「身体反応」の個人内相互作用と、個人と環境との相互作用という二重の相互作用で捉えることを基本とする。ここでは、「認知」と「行動」は自分で選択が可能であり、それを変えていくことで、結果的に、意図的には選択が困難な「気分・感情」や「身体反応」、そして「状況や他者との関わり」が改善されるという考え方に基づく、基本的には認知への介入と行動への介入とを含むものとする
  • コラム法(認知再構成法、認知への介入)
    • 認知の歪みの10パターン
    • コラム法を用いて、ネガティブな自動思考を合理的思考に置き換える訓練を行なっていくと、自己否定的になりがちであった同様の状況においても、合理的思考が浮かびやすくなる
  • 活動記録表(行動への介入)
  • 読書療法を用いたホームワーク
  • 第三世代の認知行動療法
    • マインドフルネス認知行動療法
      • マインドフルネスとは、「今の瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる心の持ち方、存在の有様」と説明される
      • レーズンエクササイズ
      • 患者は、痛みという感覚そのものと、それから生じる自動思考と感情的反応をあわせて”痛み”と感じている。しかし、この療法の、「ボディースキャン」というトレーニングによって、足のつま先から頭の先まで身体の各部位に対して順次意識を集中し、その感覚に注意を集中させるようにすると、感覚から派生する思考と感情に気づくことが可能となる。そして、痛みを感じたらその部位でとどまり、痛みから気を逸らそうとせずに、むしろ真正面から向き合って、その痛みの感覚をよく観察する。さらに瞑想法を用いて、その思考と感情を手放す訓練を積むようにすると、結果として痛みが軽減していくのである。
      • マインドフルネス認知行動療法以前の認知行動療法ではネガティブな自動思考と戦い、それを取り除く、あるいは変容することを目標としていたのに対し、マイドフルネス認知行動療法では、ネガティブな自動思考や感情を、まるで他人ごとのように距離を置いて眺め(脱中心化)、それを手放していくことを目標としており、そこが従来型とマインドフルネス認知行動療法とで大きく異る点である