赤羽秀徳、松平浩、岸川洋一 非特異的な範疇の腰痛における運動器(脊椎)dysfunctionの解釈とアプローチ法 2013;34(1):25-35

  • 現状の画像検査における形態学的異常の有無では痛みの原因を説明しきれない。言い換えればクリアに視覚的に捉えきれない運動器疼痛に関し、姿勢や動作との関連性が明確で一貫性があるものを運動器dysfunction(機能的な不具合)と定義することを、われわれは、暫定的ではあるが提案している
  • 予後の悪い患者は、自ら積極的に治そうというより受動的な治療が役立つというカンガを持っており、患者を慢性化させる治療者は、患者にセルフケアの意識を失わせ、自己管理の重要性を助言できないとする見解があるが、運動器dysfunctionに伴う痛みは、ある姿勢や動作により痛みが出現・増強する。逆に、痛みが解消・軽減する性質があるため、その傾向とポイントを患者と治療者の双方が把握できれば受動的治療に頼り過ぎないセルフマネジメントを達成しやすい
  • 再発および慢性化を予防するには、症状が出現してから対応するよりも、腰痛の予兆および症状が悪化しうる姿勢をすぐさま察知し、自ら注意し対処できるように教育することが極めて重要だと考えている
  • 18-65歳の脊椎dysfunction230名 姿勢・動作に関連がある腰痛と判定
    • 伸展改善型 73% 屈曲改善型 16% 側屈改善型 10%
    • 1改善すると想定された適切な方向への負荷 2想定とは異なる逆方向への負荷 3 多方向にmid rangeの運動をそれぞれ行う群に無作為に割付ておこない、2週間後の治療成績を比較
    • 自覚的な改善症例は 1 95% 2 23% 3 42%
    • RDQ 1が他群に比較して有意に優れていた
  • MDT(mechanical diagnosis and therapy)はけっして万能でない。特に心理社会的要因が極めて強い、言い換えれば脳dysfunctionが主因の患者群に著効するはずがない。しかしながら、われわれがなぜMDTのコンセプトを重要視しているかというと、髄核モデルを図示することにより脊椎dysfunctionの患者側に理解を得やすいことに加え、治療者の介入を必要最小限にとどめて、患者の姿勢・動作に対する「実体験」を通して新たな「気付き」を促しやすいのがMDTの真骨頂であり、医療者に対する”他者依存”から”セルフマネジメント”へ移行する極めて有用な方法論である