多彩な身体症状の奥にある心の傷

松田孝之、氏家武 多彩な身体症状の奥にある心の傷 小児科診療 2010;73(1):56-60

  • 疼痛性障害
    • 一つ、またはそれ以上の身体部位の疼痛が長期に続き、その症状には心理的要因が関与していると考えられるが意図的なものではなく、それにより仕事や学業に著しい機能障害が生じるものである。どの年齢にもおこりうるが、女性に多い。また、この障害は気分障害と不安障害を合併することがあり、急性の疼痛は不安障害に、慢性の疼痛は気分障害に合併する傾向がある
  • 診断のポイント (身体表現性障害)
  • 以下の3つを押させておくことが肝要である
    • 症状を説明しうる器質的身体疾患が存在しない
    • 患者本人にとっては疾病利得がある(症状によって精神的苦痛から逃れられることを一次疾病利得、症状によって現実的な利益を得ることを二次疾病利得という)
    • 症状の訴えは意図的ではない
  • 小児心身症の4つのタイプ
    • 心身反応型、葛藤回避型、身体表現型、経過修飾型
  • 心身症的対応の落とし穴
    • 子どもが訴える身体症状は実際に体験されている本当のことである
      • 「診察や検査で異常がみつからない」=「病気ではない」ということではないし、「ストレスが軽減すると症状が消える」=「仮病(詐病)}ということでもない。医師は時として「器質的異常を伴わない身体症状」を軽視しがちだが、身体症状を背景にある子どもの苦しみのサインとしてしっかりと受け止める必要があり、それが心身症治療の第一歩となる
    • 心理的ストレスは必ずあるが、必ずしも子どもがそれを自覚してはいない
      • 「心の病」とみなされることに子どもや家族が強い劣等感や罪悪感を抱くことがあり、身体疾患として扱うことでうまく治療が進むことが多い
    • 自分の考えを押し付けてはいけない
    • 治療の基本は子どもや家族に信頼されることであり、そのためには子どもと家族の訴えを傾聴し無批判的に受け入れる必要がある。治そうと思うより共感することに徹し、自然に治るのを見守る感じがよいのである