慢性疼痛患者の心理

山内涼子、池田祥子 慢性疼痛患者の心理 診断と治療 2007;95(6):861-864

  • 慢性疼痛患者の多くが抑うつ傾向にあることはよく知られているが、慢性疼痛は患者に抑うつ以外にも不安、怒り、焦りなどの心理的反応を引き起こす
  • 人は痛みに脅かされることによってじつに様々なレベルでの喪失を体験する
    • 職業を持たない高齢者は、家庭内や地域で担ってきた役割を果たせなくなり、逆に世話をされる立場になる。これは、多くの場合受け入れることが難しい
  • 慢性疼痛患者の心理を理解するためには、その患者にとって痛みがどのような体験であるかを知ることが不可欠である
  • 接し方のポイント
  • 慢性疼痛患者の治療において心理的な側面に注目されることは重要であるが、心理社会的要因が疼痛の発症や持続に関与する場合があるということが一般にはまだあまり知られていない。
  • 現在の痛みによって起きているストレスや精神的な変調について聴取し、それまでの様々な苦痛に対して理解や共感を示すことが重要である
  • 痛みの背景 長い治療の経過の中で近親者の自死や配偶者の暴力など、重大な出来事が語られることもある。それらは治療者との関係性のなかで、語られる機が熟したときに明らかになっていく。
  • 治療者に湧き上がっている陰性感情が、患者の疼痛の訴えや疼痛行動に影響を及ぼして・いないだろうか
  • 解決方法
    • 患者に「この痛みを(治療者に)とめてもらう」という受身的な立場から、「治療者と共に、痛みをコントロールしていく」主体的な存在へと変容してもらうことが、解決への大きな課題となる
  • 治療者が100%痛みを除去できるわけではないが、お互い協力して痛みをコントロールしていきましょう、ということを患者に伝え理解してもらうのである
  • その生活(無意識の痛みの対処法)や心のあり方のなかにこそ、慢性疼痛患者の心理的問題の解決像を発見することができると思われる
  • 「他の病院(医師)」を紹介する際、患者の見捨てられ不安をかきたてないよう配慮することが重要なポイントである
  • 「他の医師の意見も聞いて見ましょう」と、自らの医師―患者関係は保った上で、紹介受診してもらうという配慮が患者に大きな安心と信頼感をもたらすように思われる