子どもの身体的痛みのメカニズム

五十嵐恒雄 子どもの身体的痛みのメカニズム 小児看護 2011;34(8):942-948

  • 小児の発達と痛み 小児心身医学会ガイドライン集より
    • 新生児期の痛み経験は、副腎皮質ホルモンなどの内分泌環境に影響を与え、成長後の痛みの個体差に影響するといわれている
    • 被虐待児においては、1)フラッシュバックでの痛みの再体験、2)知覚過敏による痛覚の亢進、3)性的虐待を受けた場合に腹痛や性器の痛みを感じる、4)手首など違和感・痛みを感じ、その部位でのリストカット、5)腹痛・頭痛・四肢の痛みや跛行、異常な肢位や痛み、などの反応が見られる
    • 急性のストレスは痛みを抑制するが、慢性のストレスは痛みを増強する。慢性のストレスはCRH(corticotropin releasing hormone)の末梢におけるレベルを高め炎症を増悪させたり、カテコラミンレベルを上昇させたりすることにより、(カテコラミンが一次性求心線維を感作する)痛覚過敏を引き起こす。また慢性のストレスは中枢神経系においても痛みを伝える神経伝達物質を増加させ、これも痛覚過敏を引き起こす
    • 幼少時の強いストレスは、痛覚過敏を引き起こしたり、視床下部ー下垂体ー副腎皮質系ホルモンの持続高値とストレスへの脆弱性を引き起こしたりする可能性がある
    • うつ状態は下行性抑制系に関与するノルアドレナリンセロトニンなどの脳内での機能低下を引き起こし、下行性抑制系の機能低下をとおして痛覚過敏や慢性疼痛を引き起こす
    • 社会的疎外など精神的ストレスは痛み関連脳領域(体性感覚野、島皮質など複数の大脳皮質領域)を活性化して「心の痛み」ともいえる状態を引き起こす可能性がある